小さな約束
40
艦隊の動きが止まる。
「周囲の警戒を怠るな」
即座に指示が飛ぶ。
「了解しました」
間髪入れず行動をする。それは訓練を受けたものであれば当然のことだ。
「……合流はいつになります?」
ふっと思いついてラウは上官に問いかける。
「そうだな。あちらが出航して、二時間後と言ったところか」
もっとも、と彼は続けた。
「その前に、一個小隊をあちらに向かわせるが」
そうでなければ、シャトルが無防備になる時間ができてしまう。そこを攻撃されては意味がない。
「出撃の準備をしておきたまえ」
と言うことは、合流するまでの護衛は自分達が担うのだろう。もちろん、それに関する異存はない。
「了解しました」
だが、と言葉を返しながら考える。
自分が彼の立場であれば、オーブの支配域ぎりぎりまで近づいて待つだろう。今回の状況であれば、それでサハクの双子が文句を言ってくる可能性は低い。
もっとも、今の自分では彼の命令に従うことしかできない。しかし、部下を指揮して直接護衛できるだけでもマシなのだろう。
やはり、もっと力が必要か。
そのためには着実に成果を積み上げるしかない。
「……合流してから、時間を見てあの子達の顔を見に行くか」
気分転換になるだろう、とそう呟く。
「あの男のイヤミぐらいならば我慢できるしね」
もっとも、最近はレイはあの男の悪い影響を受けすぎているような気がする。それがキラに伝染しなければいいのだが。
もっとも、キラの前でそのような本性を見せる二人ではないと言うことも知っている。
だからこそ、自分はキラから離れていられるのだ。
「さて。彼らに出撃のことを伝えなければいけないね」
自分の部下達に、と続けるとラウは歩き出した。
「キラからのメールがきたそうですが?」
ミゲルがこう問いかけてくる。
「えぇ。らいしゅう、かえってくるそうですわ」
ラクスがそう言って微笑む。
「ちょうどいいタイミングですね」
バカが改心したようですし、と彼女は付け加えた。
「かい心したというよりは、ぼーぜんじしつだと思いますけど?」
いったい何をやったのか。興味はあるが聞かない方が身のためだろう、と言うこともわかっている。
「しんじつをおしえてほしい、と言われましたから、わたくしが知っていることをお伝えしただけです。ぜんぶ、しゅかんこみで」
それは確かに茫然自失もなるだろう。もっとも、それに関して同情する気は全くないが。
「……まぁ、キラのしゅうへんがおとなしくなるならいいですけどね」
それが一番だ、とミゲルは続ける。
「俺もいつまでもキラのそばにいられるわけじゃないですし」
彼はそう続けた。
「それでも、キラの友だちではいられますわ」
違いますか? とラクスは問いかけてくる。
「もちろんだ」
「なら、十分ですわ」
そうでしょう? と彼女はさらに続けた。
「そうですね」
確かに、自分達はそれで十分なのかもしれない。ミゲルはそう考えて頷く。
「いつもいっしょにいるあいてだけが友だちだと言うわけじゃないですね」
そう口にするとミゲルは笑う。
「でしょう?」
ラクスもそう言って笑みを深めた。