小さな約束
39
レイと二人でベッドの上でごろごろしていたときだ。
「二人とも、退屈なようだね」
そう言いながらギルバートが室内に入ってくる。
「ギルさん!」
「おしごとはいいのですか?」
体を起こしながら二人はそう問いかけた。
「だいたいね。後は迎えが来るのを待つだけ、かな?」
だから、これからは暇だよ。彼はそう付け加える。
「むかえ、ですか?」
それよりもこちらの方が気になる。
「きたときはみんかんのシャトルでしたよね?」
レイも同じだったのか。同じように疑問を口にした。
「民間のシャトルも気に入らないと言う連中がいてね」
困ったことだ、とギルバートは呟く。
「だから、訓練に出ているザフトの艦隊と同行するようにとのことだよ」
それはいざという状況をかんがえてのことなのか。
「もっとも、誰かがあれこれとだだをこねた可能性は否定しないがね」
この言葉はどういう意味なのか、キラにはすぐにわからなかった。だだをこねるような大人がザフトにいるのだろうか。
「……ラウさんのことですか?」
そのだだをこねた人というのは、とキラは問いかける。もちろん、否定の言葉が返ってくると信じて、だ。
「やはりわかるかね?」
だが、あっさりとギルバートは肯定してくれる。
「ラウならやりそうです」
しかも、レイもあっさりと同意をしていた。
「意外と寂しがりやだからね、彼も」
小さな笑いとともにギルバートはそう言う。
「家にキラがいないのも初めてだろうしね」
出迎えてもらえなくてふてくされたのだろうか。そう言われても、そんなラウの姿は想像できない。
「そうなの?」
キラはそう言って首をかしげる。そのまま、レイに視線を向けた。
「おれのくちからはなにも……」
彼は苦笑とともにこう言ってくる。
「……レイ……」
それはそれで肯定しているようなものではないか。
「ラウさんはかっこいいと思ってたのに」
言葉とともにキラはため息をつく。
「君が大切なだけだよ」
昔からね、とギルバートはキラの頭を軽くなでる。
「ここが安全なことは彼も知っているはずなんだがね」
やはり、最近の地球軍の動きが心配なのだろうか。彼はそう続けた。
「そんなにまずいのですか?」
「当面は大丈夫だろうね。オーブが仲裁に入ってくれる」
だから、安心しなさい。その言葉に素直にうなずけない。
「とりあえず、ラウをからかう方法を考えようか」
「ギルさん?」
「その方が楽しいだろう?」
余計な事を考えて落ち込むよりも、とギルバートは笑う。
「……キラにスカートをはかせてみましょう」
カガリに頼まれていたのだ、とレイが口を挟んでくる。
「やだ」
即座にキラはそう言う。
「似合いそうなのにね」
ギルバートにまで真顔でそう言われてはどうすればいいのか。キラにはすぐに思いつかなかった。