小さな約束

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 カタカタと、キラがキーボードを叩いている。
「なにをしているんだ?」
 興味を覚えて、カガリはこう問いかけた。
「友だちにメールをかいてるの」
 キラはそう言いながらゆっくりと振り向く。
「やくそくしたから」
 時間があるときにメールをするって、とキラは続ける。
「そうか」
 それならば納得、とカガリは頷く。
 出会ってからまだ数日だが、キラがそう言った約束事を大切にしていることはよくわかった。
「そういう友だちがいるのはうらやましいな」
 だから、素直にこう言ってみる。
「……オーブほんどにもどれば、カガリにもお友だちはいるでしょう?」
 キラはそう言って首をかしげた。
「いるけどな……したしくなりすぎるとおいはらってくれるバカがいるんだ」
 全く、鬱陶しい。そうはき出す。
「だから、おまえと会えてうれしいんだ」
 そう言って笑って見せた。
「……カガリにも、そういう人がいるんだ」
 だが、キラの反応は予想外のものだった。
「おまえにもそんなやつがいるのか?」
 この言葉にキラは小さく首を縦に振ってみせる。
「だから、ギルさんがいっしょにつれてきてくれたの」
 ラクスが何とかしてくれるって言っているけど、と付け加えた。
「そいつがオーブにいればよかったのにな」
 そうすれば自分がぶん殴ってやれたのに、と心の中だけでカガリは呟く。いや、その前にカナードに闇討ちされるだろうか。
 どちらにしろ、そいつのせいでキラが悲しそうな表情をすることはなくなるだろう。
「ラクスとミゲルならまかせてもだいじょうぶだと思う」
 だから、気にしないで。キラはそう言いながら首をかしげた。
「カガリの方がたいへんじゃないの?」
 そう言う意味では、と逆に聞き返される。
「だから、カナードさんたちにそうだんしているところだ」
 効果的な方法を考えてくれるだろう、と付け加えた。それも、かなりえぐいだ。だが、それはキラに教えなくてもいいだろう。
「カナードさんもしっている人なの?」
「ものすごくきらっている」
 ウザイから、とカガリはため息とともに言った。
「はっきりいって、カナードさんの足もとにもおよばないじつりょくしかないくせに、どうとうだとかんちがいしているくらいバカだ」
「……じぶんのことをしらないの?」
「じぶんのこととなると正しいにんしきができないんだよ」
 周りがおだてるから、とカガリは言う。
「それじゃ、おとなになってからこまるのにな」
「そうだね」
 カガリの言葉にキラも頷いている。
「とりあえず、こちらの友だちかんけいに口を出すのをやめてくれればいいんだが」
 その他のことは大きくなってから自分で何とかするとして、とカガリは続けた。
「まぁ、いざとなればじつ力こうしをすればいいんだが」
 それで半月ぐらいはおとなしくしているから、と彼女は笑う。
「……なら、手がはなせなくなるような何かをおしつければいいんじゃないかな?」
 キラはそう言ってくる。
「そうだな。それをかんがえてもらおう」
 カナードに提案してみよう。カガリはそう言って頷く。
「やっぱ、お前はおもしろいや」
 こいつとはもっと親しくなりたい。カガリは本気でそう考えていた。

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