小さな約束

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 サハクの住むアメノミハシラへはオーブのシャトルで向かうという。
「……すごいね」
 プラント間を移動するシャトルとは全く違う船内に、キラは目を丸くする。
「そうですね」
 レイも同じように驚いているようだ。
「これはサハクの専用機だそうだよ」
 ハッチのところで乗組員と何かを話していたギルバートが追いついてくる。そして、こう教えてくれた。
「サハクの?」
 何故、と思う。
「この前、お二人にお目にかかったのは覚えているね?」
 この問いかけにキラは素直に頷く。
「その時に、君が気に入られたのだよ。それに、君たちはまだ幼い。普通であれば保護者に同行するにしてももっと近い場所――プラント国内ぐらいなものだ」
 例え友好国とはいえ、何が起きるかわからない。もっと正確に言えば、どこに厄介な馬鹿どもブルーコスモスが潜んでいるのかわからないのだ。
 だが、アメノミハシラであればその可能性は低い。
 問題があるとすれば、航行中のシャトルと乗り換えのステーションだろう。
「少しでも安全に、と考えてくださったのだろうね」
 会ったらお礼を言わないと、と付け加えられてキラは首を縦に振る。
「なら、座りっていなさい。出発までもう少し時間があるようだからね」
 ギルバートはそう言うと、左右の手でキラだけではなくレイの頭もなでる。
 その感触に少しだけ気持ちが軽くなった。同時に、あることに気づいてしまう。
「はい。そういえば、ここからメールって出せるのかな」
 小さな声でそう呟いた。
「できるとは思うが……どうかしたのかな?」
「ラクスに、言ってない」
 心配しているのではないか。そう続けた。
「たぶん、シーゲルさまからお聞きだとは思うが……そう言うことなら、後で確認しておいてあげよう。出航してからでも可能だろうからね」
「はい」
 ならば大丈夫だろう。キラはそう判断して微笑む。
「キラ。すわりましょう」
 今まで黙っていたレイがキラの手を握るとこう言ってきた。
「メールならせきでもかけます」
 さらに彼は言葉を重ねる。
「そうだね。立ってやることじゃないよね」
 キラはそう言って頷く。
「では、二人とも先に座っていなさい。あぁ、ラウにもメールを出してやりなさい。寂しがっているようだからね」
 ある意味、ラウに似つかわしくないセリフかもしれない。  だが、実際には彼は家に帰ってこられないのが気に入らないらしい。軍を辞めたいと騒ぎまくっている。 「わかりました。そういえば、おみやげってかえるのかな?」
 そのくらいならばかまわないのではないか。キラはそう思いながら口にする。
「どうでしょう。でも、カナードさんにそうだんすればなんとかなるかもしれません」
 そういえば、あちらには彼がいた。
「そうだね。おじかんもらえるようなら、そうだんしてみよう」
 キラはそう言って微笑む。
「あ、そうだ。それなら、さいしょにメールでおねがいしておけばいいんだ」
 メールアドレスは教えてもらっている。だから、彼にも書いておこう。
「それがいいですね」
 レイも同意をしてくれる。ならば、急いだ方がいいだろう。
「……おみやげは、ラクスとミゲルのもさがしておかないと」
「ミゲルさんのはおれもてつだいます」
「おねがい」
 そう言うと彼は微笑んでくれる。
「仲がよくていいね」
 ギルバートのこの言葉にどう反応すればいいのか。そう思わずにいられない。
「とうぜんです」
 胸を張って言い返せるレイは、自分よりもすごいのではないだろうか。キラは本気でそう考えていた。

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最遊釈厄伝