小さな約束
26
サハクの住むアメノミハシラへはオーブのシャトルで向かうという。
「……すごいね」
プラント間を移動するシャトルとは全く違う船内に、キラは目を丸くする。
「そうですね」
レイも同じように驚いているようだ。
「これはサハクの専用機だそうだよ」
ハッチのところで乗組員と何かを話していたギルバートが追いついてくる。そして、こう教えてくれた。
「サハクの?」
何故、と思う。
「この前、お二人にお目にかかったのは覚えているね?」
この問いかけにキラは素直に頷く。
「その時に、君が気に入られたのだよ。それに、君たちはまだ幼い。普通であれば保護者に同行するにしてももっと近い場所――プラント国内ぐらいなものだ」
例え友好国とはいえ、何が起きるかわからない。もっと正確に言えば、どこに厄介な馬鹿どもが潜んでいるのかわからないのだ。
だが、アメノミハシラであればその可能性は低い。
問題があるとすれば、航行中のシャトルと乗り換えのステーションだろう。
「少しでも安全に、と考えてくださったのだろうね」
会ったらお礼を言わないと、と付け加えられてキラは首を縦に振る。
「なら、座りっていなさい。出発までもう少し時間があるようだからね」
ギルバートはそう言うと、左右の手でキラだけではなくレイの頭もなでる。
その感触に少しだけ気持ちが軽くなった。同時に、あることに気づいてしまう。
「はい。そういえば、ここからメールって出せるのかな」
小さな声でそう呟いた。
「できるとは思うが……どうかしたのかな?」
「ラクスに、言ってない」
心配しているのではないか。そう続けた。
「たぶん、シーゲルさまからお聞きだとは思うが……そう言うことなら、後で確認しておいてあげよう。出航してからでも可能だろうからね」
「はい」
ならば大丈夫だろう。キラはそう判断して微笑む。
「キラ。すわりましょう」
今まで黙っていたレイがキラの手を握るとこう言ってきた。
「メールならせきでもかけます」
さらに彼は言葉を重ねる。
「そうだね。立ってやることじゃないよね」
キラはそう言って頷く。
「では、二人とも先に座っていなさい。あぁ、ラウにもメールを出してやりなさい。寂しがっているようだからね」
ある意味、ラウに似つかわしくないセリフかもしれない。
だが、実際には彼は家に帰ってこられないのが気に入らないらしい。軍を辞めたいと騒ぎまくっている。
「わかりました。そういえば、おみやげってかえるのかな?」
そのくらいならばかまわないのではないか。キラはそう思いながら口にする。
「どうでしょう。でも、カナードさんにそうだんすればなんとかなるかもしれません」
そういえば、あちらには彼がいた。
「そうだね。おじかんもらえるようなら、そうだんしてみよう」
キラはそう言って微笑む。
「あ、そうだ。それなら、さいしょにメールでおねがいしておけばいいんだ」
メールアドレスは教えてもらっている。だから、彼にも書いておこう。
「それがいいですね」
レイも同意をしてくれる。ならば、急いだ方がいいだろう。
「……おみやげは、ラクスとミゲルのもさがしておかないと」
「ミゲルさんのはおれもてつだいます」
「おねがい」
そう言うと彼は微笑んでくれる。
「仲がよくていいね」
ギルバートのこの言葉にどう反応すればいいのか。そう思わずにいられない。
「とうぜんです」
胸を張って言い返せるレイは、自分よりもすごいのではないだろうか。キラは本気でそう考えていた。