小さな約束

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  25  



 保護者達がどのようなことを話し合ったのか。キラは知らない。
「……おでかけ、ですか?」
 だが、唐突に提案をされて、思わず聞き返してしまった。
「そう。私がサハクのお二人のところに出かけるからね。どうせなら、君たちも連れておいで、とおっしゃっていただいたのだよ」
 学校はしばらくお休みすることになる。だが、すぐに長期休暇に入るから、かまわないのではないか。
「でも……」
 そんなわがままが通るのだろうか、と不安になる。
「これも勉強だよ」
 オーブの現状を見てくると言うね、とギルバートは言う。
「第一、君たちの勉強ぐらいなら、私でも見てあげられるよ?」
 学校からは課題をもらっておこう、と彼は続けた。
「……おしごとは?」
「移動中にできる仕事は少ないからね。時間は十分あるよ」
 安心しなさい、と言いながら、彼はキラの頭をなでてくれる。
「はい」
 ギルバートがここまで言うのであれば大丈夫なのだろう。だから、とキラは頷く。
「おでかけのじゅんびは?」
「皆に任せておけばいい」
 キラはちゃんと寝て、体調を整えておくように。ギルバートはそう続ける。
「はい」
 キラは素直に返事を返す。
「いい子だ」
 この言葉に微笑めば、ギルバートは目を細めた。
「では、部屋に戻りなさい。後、レイを呼んできてくれるかな?」
「はい」
 レイにも同じ話をするのだろう。ならば一緒にやればよかったのに、とキラは思う。しかし、ギルバートにはビルバートなりの理由があるのではないか。そう判断した。
「頼んだよ」
 こう言われて、キラは小さく頷いて見せた。

 ギルバートの説明に、レイはわかったと首を縦に振ってみせる。
「あそこならばカナードさんがいます。ここよりはいごこちがいいとおもいます」
 さらにこう付け加えればギルバートがため息をついて見せた。
「そこまでかね?」
「はい。キラがおしえていないのに、ここにれんらくがきますから」
 メールの方はどうなっているかわからない。だが、キラのことだ。親しい者達以外のメールでも一通り目を通しているのではないか。
「フィルタリングを強化しておくか」
 ギルバートがそう言う。
「だが、ラウが帰ってこないと手をつけられないね」
 ここのシステムは彼が作ったものだ。だから、下手に手を出すことはできない。
「……それならば、あとでラウにキラにおしえておいてくださいと、いってください」
 キラはそちら方面に興味があるのだろうか。よくプログラミングの本を眺めている。 「あぁ。それならば向こうでギナ様に頼もう」
 彼はそう言うことは得意だと聞いているから、とギルバートが笑う。
「もっとも、裏技はほどほどにしてもらわないとね」
 そのようなものは、キラがもっと大きくなってからでいい。
「むずかしいとおもいます、それは」
 キラは興味を持てばどんな手段でも学ぼうとする。そして、現在はプログラミングがもっとも気になっている分野らしい。
「……そうか」
 では、教師を用意しないとね。少し考え込んだ後でギルバートはそう告げる。
「へやにもどっていいですか?」 「それよりもキラのそばにいなさい」  一緒に寝てもいいからね。そう言われて、レイは淡く微笑む。
「はい」
 そう言うと立ち上がった。

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最遊釈厄伝