小さな約束
22
「ラクス?」
友人の顔を見つけて、キラは無意識に笑みを浮かべる。
「もういいの?」
「えぇ」
ラクスもそう言って微笑み返してくれた。
「でも、そのまえに、こちらのかたがたをキラにしょうかいしなければいけませんの」
気に入らなければ無視してくれていいから、と彼女は付け加えた。
「それよりも、その方をしょうかいしていただけません?」
仲良くなったのでしょう? と言外に問いかける。
「うん。オーブのカナードさんだよ」
こちらは親友のラクス、とキラは彼女のことを紹介してくれた。その一言が嬉しい。
「ラクス・クラインともうします。よろしくおねがいいたします、カナードさま」
その気持ちのまま微笑みながら言葉を口にした。
「カナード・バルスだ」
そうすれば、彼はそう言い返してくる。口調はぶっきらぼうだが、声音は優しい。つまり、彼はこう言う性格なのだろう。
「それで、そいつらは?」
ラクスの後ろでぼうっと立っている男達に視線を向けるとカナードはこう問いかけてくる。
「まんなかの人がミゲルだよ」
キラが明るい口調でこう言ってきた。
「ぼくといっしょにラウにきたえてもらっているひとです」
さらにレイが口を開く。
「そうか。一度手あわせねがいたいな」
カナードはそう言って笑う。
「で? ほかのれんちゅうは?」
「ぼくもはじめて会う人だから……」
カナードの問いにキラはこう言って首をかしげる。
「右からディアッカ・エルスマンさま、イザーク・ジュールさま、アスラン・ザラさま、ニコル・アマルフィさまですわ」
先ほども言ったとおり、覚えなくてもかまわない。ラクスはそう続ける。
「ラクス……」
キラが困ったように彼女の名を呼んだ。
「だって、同じ学校でも何でもありませんわよ?」
滅多に会わないのに、とラクスは言い返す。
「カナードさまとはちがいますわ」
キラが友だちになりたい人ではないから、と続ければ、背後から意味ありげな視線が向けられる。
「もっとも、キラがこの方々と友だちになりたいならはなしはべつですけど」
言葉とともにラクスは首をかしげた。
「わかんない」
それにキラはこう言い返してくる。
「わからないのか?」
ミゲルが即座に問いかけた。
「だって、きょう、あったばかりだもん。まだ、はなしもしてないよ?」
カナードとはたくさん話をしたけど、とキラは続ける。
「それもそうか」
納得、とミゲルも頷く。
「……キラ」
ため息混じりにカナードが口を開いた。
「なに?」
小首をかしげつつキラは彼を見上げる。そのかわいらしさにアスラン達が息を呑んだのがわかった。
それは当然だろう、とラクスは心の中で呟く。自分のキラはこんなにもかわいらしいのだ。そう言って胸を張りたいほどだ。
「そいつらの家名を知っているか?」
「ううん。しらないと、だめ?」
即座に言い返された言葉に、アスラン達が信じられないものを見たように目を丸くしている。
「おうちの名まえはおとうさんとかががんばったからゆうめいで、じぶんががんばったからじゃないってラウさんがいってた」
だから、偉くないんだって。キラはそう続けた。
「その通りだな」
カナードはそう言って頷く。
それはキラらしいと思う。しかし、彼らの前で言って欲しうなかった。すでに彼らがキラを見る目が変わってきている。
これは厄介なことになりそうだ。間違いなく彼らはキラに執着するだろう。
どうすればキラを守れるのか。ラクスは本気でそれを考え始めていた。