小さな約束

BACK | NEXT | TOP

  20  



 普段ならばパーティなど煩わしいと切り捨てるところだ。
 しかし、今回はそう言うわけにはいかない。
「さて、あの子達はどこかな?」
 ミナはそう呟くと周囲を見回す。
「……あそこのようですね、姉上」
 すぐにギナが言葉を返してくる。
「あの人と同じ色彩の子供がいます」
 何よりも、彼女によく似ている……と彼は続けた。
「確かに」
 ギナは無視しているが、そばにもう一人、見覚えのある顔をした子供がいる。だから、あれがあの子だろう。
「さて……どうやって声をかけるか」
 ミナがそう呟いた時だ。二人の間にいた少年がさっさとそちらへ駆け出していく。
「カナード?」
 何を、と問いかけるまもなく、彼は壁際にいた二人のところまでたどり着いてしまった。
「周りが大人ばかりでつまらなかったのであろ」
 ギナが平然とこんなセリフを口にする。
「……お前がそそのかしたのか?」
 ミナはそんな彼に問いかけた。
「あれもあの子達に会いたかったのであろう」
 カガリとは違って、キラと過ごした記憶があるのだから、と言外に付け加えてくる。
「ともかく、追いかけるか」
 それを口実にキラに声をかけられるだろう。もっとも、後であの二人に抗議されるかもしれないが。だが、それは無視できる。
 そんなことを考えながらミナは歩き出した。もちろん、ギナも着いてくる。
「こんにちは。キラ、です」
「れいです」
 ぺこりと頭を下げながら二人がカナードに声をかけている声が耳に届く。
「カナードだ。オーブから来た」
 そんな二人に向かって、カナードがこう言っている。
「……あれも礼儀を知っておったのか」
 自分でけしかけたくせに、ギナは本気で驚いていた。
「それなりに教育しておるからな」
 必要と思えることは教えている、とミナは言い返す。
「カガリへの影響もあるだろう?」
 あの娘にはいろいろと手を焼いているのだ。だから、身近にいる者達はそれなりに学んでいなければならない。
「あの娘にも困ったものだの」
「半分以上お前の影響だがな」
 ミナは間髪入れずに突っ込む。
「お前がおとなしくしておれば、あれも素直に教師の話を聞くであろうに」
 困ったものだ、と呟く。
「まぁ、よい。それに関しては後でじっくりと話をすべきことだ」
 今はキラを顔見知りになっておくことの方が重要だろう。
「……理不尽ではないか?」
 ギナはそうぼやく。
「お前は弟だからな。好きにしてかまわんのだよ」
 あきらめろ、とミナは言い切る。
「さて……あれはうまくやっておるかな?」
 キラに嫌われていなければいいのだが。そう思いながら近づいていく。
「おうちのさくらはオーブからきたんだって。オーブにはたくさん、さくらがあるの?」
「そう聞いている」
「いつかみにいきたいな」
「そのときはれんらくをよこせ。あんないしてやる」
 そうすれば、彼らの会話が耳に届いた。
「普通に会話しておるの」
「信じられないがな」
 ギナの言葉にミナは苦笑を浮かべる。その表情のまま、彼女は会話の中に加わっていった。

BACK | NEXT | TOP


最遊釈厄伝