小さな約束

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 目の前のそれをラウは忌々しそうににらみつけている。
「あきらめるしかないだろうね」
 そんな彼に向かってギルバートがこう声をかけてきた。
「我々が力を持てば、それなりのしがらみができるのは仕方がないことだよ」
 さらに彼はこう続ける。
「場所がクライン邸で、しかも、レイを同行してもかまわないという話だしね」
 キラのそばにレイをつけておけば心配は半減するのではないか。
「それに……今回は、オーブからの客人もおいでらしいよ」
 誰とは言わないが、とギルバートは続ける。
「双子に決まっているだろう」
 即座にラウは言い返して来た。
「だろうね。ウズミ様はそう簡単には動けまい」
 何よりも、彼らはナチュラルだ。プラントに入国するのは難しい。
 しかし、双子はコーディネイターだ。オーブとのつながりを保っていたいプラントとしてはありがたい人物だと言える。
「あの子も連れてくるそうだよ」
 ギルバートはそう続けた。
「……彼も?」
 本気なのか、と呟く気持ちもわかる。彼もキラほどではないが厄介な立場なのだ。
「子供であればキラのそばにいてもおかしくないと判断したのだろうね」
 だが、それはこちらにとっても都合がいい。
 キラ達と彼が顔見知りになっていれば、万が一の時の選択肢が広がる。そうでなかったとしても、そばにいるのが当たり前の存在だったのだ。顔を合わせることに反対はできない。
「カガリ嬢では難しいが、彼ならば不可能ではない」
 そうだろう、と問いかける。
「そうですね」
 確かに、とラウも納得したようだ。
「そういうことだからね。その日の予定は空けておいてくれると嬉しいね」
 上司達からの指示だ。それなりの根回しもしていてくれるだろう。
「だといいのですが」
 どちらにしろ、周囲からのやっかみは増える。ラウはそう言ってため息をつく。
「まぁ、それを跳ね返せるだけの力をつければいいだけか」
 だが、すぐに彼はこう言って笑った。
「問題は、そうなればキラのそばにいられなくなることだが……」
「妥協するしかないだろうね、それは」
 自分も似たようなものだ、とギルバートは苦笑を浮かべる。
「誰にも何も言わせなければいいだけだね」
 後は無視するしかない。そうも続ける。
「さて……キラとレイにはどのような服を着せようかな」
 おそろいでもかわいいだろうか、と呟く。
「今の年齢なら、フリルやレースでも気にしないできるだろうね」
 ラウが笑いながらそう言ってくる。
「さすがにスカートは無理だろうが」
「ショートパンツでかまわないのではないかな?」
 そんな会話が楽しいとは昔は考えたこともない。だが、今の自分達には十二分に楽しいことだ。同時に子の間だけは煩わしいことから離れていられる。
「ラクス嬢に文句を言われないようにしないといけないわけだが」
 難しい問題だ、とギルバートが言えば、
「あの双子の及第点ももらわないといけないよ」
 ラウもため息とともに言葉を吐き出す。
「あの子達が人気者なのは嬉しいが、保護者が多すぎるのものね」
「まぁ、それはそれで楽しいと考えるべきだろうね」
 キラが人気者なのだから。そう言うとギルバートは脇に置いてあったカタログを引き寄せた。

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最遊釈厄伝