小さな約束

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「ミゲル、レイ。おちゃ、あるよ」
 ぐったりとした彼らにキラはそう声をかける。
「ラウさんのコーヒーもあります」
 そう続ければ、ラウは小さく頷いて見せた。
「彼はなかなか筋がいい。月に一度は相手をしてあげられるようにしよう」
 かすかな笑みとともに彼はそう告げる。
「だって。よかったね、ミゲル」
 がんばってね、とキラは微笑む。
「そうですね。早くわたくしたちをまもれるようになってください」
 そうでなければ、安心して次のステップに進めない。ラクスのこの言葉にキラは首をひねる。
「つぎのステップ?」
 何、と聞き返す。
「どうせなら、みんなでおかいものとかにいきたいじゃないですか」
 ミゲルが『使える』と判断されたならば許可が出るかもしれない。だから、とラクスは笑みを深める。
「がんばってくださいね、ミゲル」
 自分達のために、と彼女は告げた。
「そうしたら、おたのしみもまっていますわ」
「……それはそれでこわいような気がしますけどね」
 ミゲルはそう言うと深いため息をつく。
「でも、キラがいっしょならだいじょうぶか」
 それだけは確実だよな、と彼は付け加えた。
「ミゲル? ラクス……なんのおはなし?」
 キラはそう問いかける。
「おれもよくわからん」
 即座にミゲルがこう言い返してきた。
「ラクスのあたまのなかみなんて、しらないほうがいいぞ」
 とんでもないことになるぞ、と彼は真顔で言う。
「そうなの?」
「そうだよ」
 彼がこう言って頷いたときだ。キラの膝に小さな手がそれられる。
「レイ、ふっかつした?」
 視線を向ければ、彼は小さく頷いて見せた。
「おちゃ、さめちゃったね。いれなおす?」
「いいです」
 そう言うと、彼は自分のカップに手を伸ばす。そのまま、中身を一息にあおった。
「……まぁ、きもちはわかるな」
 ミゲルがそう言ってため息をつく。
「つぎには、もうすこしましになっているといいな」
 自分が、と彼は付け加える。
「どりょくするしかない、です」
 レイがすぐにそう言い返す。
「だよな」
 苦笑とともにミゲルは頷く。
「ここでにげだしたら男がすたる」
 さらに彼はこう付け加えた。
「そうですね」
 思い切り、レイも同意している。
「……がいけんだけならば、女の子みたいですのにね」
 お二人とも、とラクスが指摘した。それが二人にとって認めたくない事実らしいとキラにもわかる。
「おれはおとこです!」
 あきらめているらしいミゲルは苦笑を浮かべているだけだが、レイはそうではない。果敢に反論をしている。
「ラクスにあそばれるだけなのに」
 ミゲルのこのセリフにどう反応すべきか。キラは首をかしげながら考えていた。

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最遊釈厄伝