小さな約束

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 キラの話を聞いて、どうすべきかとギルバートは悩んでいる。
「考えてみれば、来年になればキラだけではなくレイも幼年学校に進むのだしね。いい機会ではないかな?」
 そんな彼に向かってラウはそう告げた。
「だがね、ラウ」
 ギルバートは即座に何かを言い返そうとしてくる。
「来るのはラクス嬢とアイマン君の二人かな?」
 それを無視して、ラウはキラに問いかけた。
「うん。ラクスとミゲルだよ」
 だめ、とキラは首をかしげる。
「ミゲルはね、大きくなったらみんなをまもれる人になりたいんだって」
 だから、ラウの話を聞きたいのだと言っていた。
 キラの言葉に、何故自分の休暇の予定を聞いてきたのか、ラウは納得する。
「そういうことならば、時間を空けておこう」
 言葉とともにギルバートに視線を移動した。
「そうだね。いつまでもここをとじておくことはできないか」
 深いため息とともにギルバートは言葉を口にする。
「ラクス様ならば心配はいらないだろうしね。あの方のお眼鏡にかなった少年もそうだろう」
 とりあえず、彼らで様子を見てみよう。メイド達も喜ぶだろうし、と彼は続ける。
「とはいうものの、少し部屋を整えないとね。どう考えてもリビングは子供向きではない」
 かといって、最初から私室に入ってもらうのは失礼になるだろう。
「……クライン様の屋敷のように温室でも作るか?」
 そうすれば、レイの鍛錬にも使えるのではないか。ギルバートはそう言う。
「おんしつ?」
 キラがものすごい勢いでその単語に食いついた。
「温室が欲しいのかな?」
「お花、うえたいの」
 庭では許可が出なくても植えられない花でも、温室ならば植えられる。ラクスにそう聞いた、とキラは付け加える。
「確かに。でも、何を植えたいんだね?」
 この言葉に、キラは首をかしげた。
「んっとね……ピンクのゆき?」
 ピンクの雪とは何なのだろうか。誰もがそう考える。
 おそらく、キラの記憶にあるものなのだろう。だが、すぐには思い出せない。
 少なくとも、プラントに来てからのものではないはずだ。
 そうなればメンデルでしかない。
 いったいどのような花が植えられていただろうか。
 そう考えたときだ。
 脳裏にある答えが浮かぶ。
「桜か?」
 ラウはそう呟く。
「あぁ。そうかもしれないね」
 ギルバートもそう言って頷く。
「それならば、庭でも大丈夫だよ。植えてあげよう」
 他にもかわいらしい花を何種類か用意してあげよう、と彼は続けた。
「はい」
 キラが嬉しそうに微笑んだ。
「レイも希望があるなら言いなさい」
 この言葉に彼は小さく首をかしげる。だが、すぐに首を横に振った
「ないの?」
 キラが不思議そうに問いかける。
「きらの、すきなのうえて?」
 それが嬉しい、と彼は淡く微笑む。
「レイ……」
「ならば、後は私が任されようね」
 できたら、ラクスを招待するといい。ギルバートはそう言う。
「キラの誕生日までにはできるように手配してあげよう」
 さらに彼がそう付け加えれば、キラが彼に抱きつく。それが忌々しいと思ってしまうラウだった。

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最遊釈厄伝