小さな約束
12
「そういえば、キラのおおたんじょうびはいつですの?」
不意にラクスがそう問いかけてくる。
「5がつ18にち?」
多分そうだと思うのだが、とキラは首をかしげつつ言葉を返す。
「レイがすぐあとだから、いつもいっしょにおいわいするの」
だから微妙に自信がない、と続けた。
「でも、もうじきですわね」
にっこりと微笑みながらラクスがそう言ってくる。
「ラクス?」
「わたくしがおいわいしてさしあげます」
大丈夫、と彼女は笑みを深めた。
「ごかぞくとのじゃまはいたしませんわ。じゅんすいにわたくしがおいわいしてさしあげたいだけです」
おまけにミゲルぐらいなら呼んでもいいのではないか。彼女はそう言葉を重ねた。
「ミゲルはおまけ?」
「おまけです。ほんとうはわたくし一人でおいわいしてさしあげたいのですが、それではキラがつまらないでしょう?」
だからミゲルは妥協しよう、と彼女は言う。
「ほかのみんなは?」
学校で話をするような人たちはそれなりにできた。彼らを呼んでもいいのではないか。キラはそう問いかけてみた。
そういえば、最近はいじめられることも少なくなったな、と今更ながら思い出す。
ならば、もう少し仲良くなれるよう努力した方がいいのか、とキラは呟いた。
「あの人たちはキラのためになりませんわ」
しかし、ラクスはそう言い切る。
「がっこうにいるときならばかまいません。でも、それいがいでまでつきあうのは時間のむだです」
意味がわからない、とキラは首をかしげた。
「キラはそれでよいのです。わたくしたちのつごうですから」
苦笑とともにラクスはそう言う。
「とりあえず、今はわたくしにまかせてくださいませ」
そう言われては事情がわからないキラには頷く以外の道はない。
「かわいいキラをふみだいにしようとするものたちは、そうそうにたいじょうしていただきましょう」
うふふふふふ、とラクスは楽しそうに笑う。しかし、キラには本気で意味がわからない。
「……ミゲル」
教えて、と傍観者に徹していた彼に視線を向ける。
「わるい。これにかんしてはおれもりゆうがはんぶんしかわからない」
「はんぶんはわかるんだ」
「にたようなことをけいけんしているからな」
不本意ながら、と彼は苦笑を浮かべた。
「それでも、おまえよりはましだったかもしれないぞ。おれはラクスのごえいやくでつゆはらいだからな」
父親からもラクスを守れと言われているし、と彼は続ける。
「……ラウさんにあってみる? ラウさん、つよいよ」
いいアドバイスをくれるのではないか。そういえば、ミゲルは目を輝かせる。
「ラウさんって、あのラウ・ル・クルーゼさんだよな? 父さんがわかいのにすごい、って言ってた」
会えるなら、会ってみたい。彼はそう続けた。
「じゃ、きいておくね。おうちにはよべないかもしれないけど」
何故か、未だにラクスも家に呼んだことはない。ギルバートの許可が下りないのだ。もっとも、ラクスはそれを気にした様子はない。でも、何かおかしいような気がする。
後でそれについても聞いてみよう、とキラは心の中で呟いた。
「そのときは、レイにもあってね」
レイはまだ友だちがいないから、とキラは笑う。
「まぁ、それはそのときにな」
ミゲルはそう言いながら頷いてみせる。
「とりあえずは、キラのお家におじゃますることがさいゆうせんですわね」
そんなに大変なミッションなのか。キラはそう考えながらも、とりあえず、帰ったらみんなに相談しようと考えていた。