小さな約束

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  08  



 いったい、何故、彼らはキラをいじめるのだろうか。
「キラはとってもゆうしゅうですのに」
 同じくらい努力しているのに、とラクスは思う。
「らくす?」
 何、とキラが聞き返してくる。
「キラはわたくしのたいせつなおともだちだ、ともうしあげましたの」
 この言葉に、キラはふわりと微笑んでくれる。
「らくすもたいせつなおともだちだよ」
 その唇から出た言葉にラクスは満足そうに微笑んでみせた。
「うれしいですわ、キラ」
 それだけではなく、その体をしっかりと抱きしめる。
「……ちょっとうらやましいですね」
 そばで見ていたミゲルがこう呟く。
「おれがやったら、むじょうけんでおこられます」
 彼はそう付け加えた。
「あたりまえです」
 即座にラクスはそう言い返す。
「あなたはだんせいなのですから、すこしはえんりょしてください」
 この言葉にミゲルが首をかしげる。
「そういえば、キラはおとこなのか、おんななのか?」
 どっちなんだ、と彼は問いかけた。
「ないしょ」
「……えっ?」
 キラの言葉にラクスは思わずそう呟いてしまう。
「らうさんとぎるさんが『いい』っていうまで、ないしょにしておきなさいって」
 だから内緒、とキラは笑う。
「らくすにおしえていい? ってきいたら、こういわれたの。ごめんね?」
 本当のことを言えなくて、とキラは続ける。
「キラはわたくしにおしえてもかまわないとおもってくださったのですよね?」
 それだけで十分、とラクスは微笑む。
「いつか、おしえてもかまわないときにはぜったいにおしえてくださいね」
「うん」
 キラは言葉だけではなくしっかりと首を縦に振ってみせる。
「それでじゅうぶんですわ」
 ラクスはそう言うと、キラを抱きしめる腕に力を込めた。 「らくす、いたいよ?」
 キラはクスクスと笑いながらそう言ってくる。
「あら……それはもうしわけないことを」
 言葉とともに腕から力を抜く。それでもキラを解放することはない。
「こんかいのおわびに、わたくしのうちにあそびにきてくださいませんか?」
 ラクスの言葉に、キラは少しだけ考え込むような表情を作った。
「ぎるさんにきいてからでいい?」
 彼の判断を仰いでからでなければ返事はできない。キラはそう付け加えた。
「もちろんですわ」
 それは当然だろう。それなりの判断能力はあるとは言え、自分達はまだ子供なのだ。保護者の指示に従うのは当然のことだ。
 だが、断られることはないだろう。ラクスはそう考えている。
「ラクスのところがだめならばうちにくればいい」
 ミゲルがそう口を挟んできた。
「みげるのところ?」
 キラが首をかしげながらそう言ってくる。
「そう。らくすのところとちがって、ちいさいけどな」
 その分、来やすいと思うぞ。ミゲルはそう言って笑った。
「うん。きいてみるね」
 キラはそう言って頷いて見せた。

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