小さな約束

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  04  



 報告書に目を落としてウズミはほっと安堵のため息をつく。
「あちらで元気にしているそうだよ」
 そのまま視線を移動させれば、きまじめそうな視線とぶつかった。
「デュランダルの保護下にあると言う。これで、数年はごまかせるだろう」
 しかし、永遠ではない。
 あの者達は今でもあの子を探しているはずだ。
「どうするのだ?」
 双子の片割れが問いかけてくる。その膝の上には、先日ウズミの子になった少女が抱かれていた。
「とりあえず、裏から手を回すしかあるまい」
 表だって動けば、それこそ連中に気づかれる。だから、と彼はため息をつく。
「今ひとつ、不安だがな」
 ウズミの言葉に双子の養父は頷いてみせる。だが、双子の方は明らかに不満そうだ。
「どうしてですか?」
 そして、もう一人。双子の弟として引き取られた少年も、である。
「我々が下手に動けば、あの子の存在が連中に知られることになる。いや、それだけではない。あの国にいる、あの子を疎んじている者達にもな」
 それが理由だ。そういえば、彼は少し悔しげに、それでも渋々と頷いてみせる。
「ムウは?」
 代わりというように彼はそう聞いてきた。
「軍だ。キサカにしごかれている」
 キラ達を守るためにあれこれと画策しているらしい。自分はそれを応援するしかない。
「そういうことならば、我らはこれを教育するか」
 双子の姉がそう言う。
「姉上がそう言われるのでしたら」
 弟が渋々と言ったように頷く。
「その代わり、あちらにこっそりと会いに行ってもかまいませんね?」
 ばれなければいいのだろう、と言外に告げる彼に、ウズミも苦笑を禁じ得ない。
「誰も殺さず、傷つけなければな」
 その笑みの意味を的確に読み取ったのだろう。ミナがこう言う。
「それと、キラ本人との接触は禁止だ。よいな?」
 だが、彼女のこの言葉に信じられないという表情をギナは作る。彼のそんな表情は珍しいとしか言いようがない。それは彼の養父も同じ気持ちだったようだ。
「あの子の危険を回避するためだ。あきらめろ」
 ただ一人、ミナは平然とこう言い返している。
「姉上」
「どうしてもあの子に会いたければ、早々にあれらを叩きつぶせ」
 そうすればいつでも会えるようになる。彼女はそう続けた。
「……なるほど」
 それにギナはあっさりと頷く。
「そのためにはこれを使えるようにせねばならぬな」
 しごくか、と言われた当人が身をこわばらせる。
「ほどほどにしておけ」
 ミナがそう言って彼をいさめた。
「それはまだまだ成長中だ。その時期に負担をかけると大きくなれると聞くぞ」
 違うのか、とウズミと養父を見つめてくる。
「確かに、そう言われているな」
 ウズミはそう言って頷く。
「では、今しばらくは予定の三分の一だけにしておきます」
 ギナはそう言ってため息をついた。
「ただ、あの子にあれこれと贈り物をするのだけは許可をしていただきたい」
 あの子のおもちゃになりつつ身を守れるようなものをいくつか贈りたい。ギナはそう言う。
「まぁ、そのくらいならなだいじょうぶか」
 ウズミはそう言って頷く。
「ただし、殺傷力は最低限だぞ」
 この言葉に、誰もが笑い声を漏らした。

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最遊釈厄伝