愛しき花

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 自分はやはり場違いなのではないか。
 そんなことを考えながら、キラはギナの体の影に隠れるようにしていた。
「もっと堂々としておれ」
 苦笑とともにギナが声をかけてくる。
「無理です……」
 これがカレッジであれば大丈夫だ。しかし、ここにいるのは国政を担う者達だけと言っていい。
 何よりも、とキラは顔をしかめる。
 自分に向けられる憎しみの視線には耐えられない。
「無粋な者がおるから、仕方がないか」
 当然、彼もそれに気づいていたのだろう。低い声でそう告げる。
「私のそばについておれ。ただし、背筋は伸ばすのだぞ?」
 さらに彼はこうささやいてきた。
「ギナ様?」
「もし、我らに何かあれば、サハクの名を継ぐのはお前だからな」
 いきなりとんでもないセリフを彼は口にしてくれる。ここでなければ大声を上げていたところだ。
「……カナードさんじゃないんですか?」
 代わりにこう問いかける。
「あれは表に経つより裏の方がよいと言い切りおったからな。姉上も私も同じ気持ちだ」
 他の者もそれでいいと行っている。彼はそう続けた。
「もっとも、我らも当面、首長の座を降りるつもりはないがの」
 その間にミナに子を産んでもらえばいい。そう言ってギナは笑う。
「だから、お前はあまり気負うな。ただ、今はそういうことになっていると知っておけばよい」
 彼のこの言葉にどう反応を返せばいいのか。キラにはすぐには思い浮かばない。
「それに、そうしておけばカガリがおとなしいからの」
 一番の目的はそれなのだろうか。
「あれもまだまだだからな。当面はおとなしくさせておかねばならん」
 口実になれ、と付け加えられて、キラは小さく頷く。
「よい子だ」
 ギナはそう言うと彼女の髪をなでてくれる。
「それにしても、遅いの。いい加減、始まってもよい頃であろうに」
 予定ではもう始まっていたはずだ。しかし、まだ誰も顔を見せない。
「何かあったのでしょうか」
「誰も知らせに来ぬ。心配いらぬとは思うが」
 そんなことを言っていれば、ようやく代表達の姿が確認できる。
「……あっ……」
「ほぉ」
 何とか隠しているが、地球連合の代表の頬が赤い手形が刻まれていた。きっと、何かをしでかしてカガリかミナにやられたのだろう。
「後で確認しておくか」
 まぁ、大事ないようで何より。ギナはそう言って低い笑いを漏らす。
「でも、あれって、写真に写るんじゃ……」
「そのくらいは修正させるであろう」
 その程度、さほど手間はかからない。彼はそう付け加える。
「言われてみれば、そうですね」
 自分でもやろうと思えばすぐにできし、とキラは頷く。
「修正なしの方がおもしろいであろうがな」
 間違いなく本気でそう言っているに決まっている。
「そういえば、アスラン達は……」
 自分でもわざとらしいなとは思う。それでも、他にギナの意識をそらす方法を思いつかなかった。
「本当に、お主はかわいいの」
 その意図がわかったのだろう。ギナはそう言って静かに笑った。

 その日、終戦が確定した。

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最遊釈厄伝