愛しき花

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 キラが撃たれる。
 そう認識した瞬間、体が勝手に動いていた。
 強引に二人の間に割って入る。そして、ユウナの手首をつかむと上へと持ち上げた。
 しかし、それは一瞬遅かったらしい。
 引き金が引かれたと思った次の瞬間、肩の辺りに強い衝撃を受ける。だが、それよりもキラの無事の方が気にかかっていた。
 それを確かめたい。
 それなのに、何故か体がうまく動かない。
 シンがそう認識したときだ。視界が大きく揺らめく。
「シン!」
 キラの叫びが耳に届いた。
「とりあえず、そいつの止血をしておけ!」
 さらにカガリが焦ったようにこう怒鳴りつけている。
「お前はこいつの捕縛を手伝え、レイ」
「わかっています」
 頭の上で二人の会話が交わされていた。同時に、小さな手がそっと触れてくる。
「……シン……」
 泣きそうな声が耳に届く。
「だ、いじょうぶ、だから」
 安心させようと何とか声を絞り出す。
「声、出さなくていいから! とりあえず、おとなしくしていて」
 キラがそう言ってくる。だが、それに答えを返すこともできない。
 おおそらく、止血のためだろう。きつい痛みが言葉を失わせてくれたのだ。
「カガリ!」
「大丈夫。すぐに終わらせる」
 彼女が自信ありげにそう言ってくる。
「アスラン達も来たしな」
 その言葉がものすごく遠い場所で聞こえたように感じられた。

 事実、それから数分と経たないうちにユウナたちは拘束されたらしい。
「アスラン!」
 それを確認していれば、キラの声が耳に届く。
「落ち着け、キラ。そいつは無事だ」
「そうですよ。ちょっとショックが大きかっただけですから」
 ムウとレイが必死に彼女を慰めている。
「とりあえず、医者だな」
 周囲のようすを確認して、アスランはそう言った。
「あぁ」
 頷きながらもカガリの表情は硬い。
「カガリ?」
「気にするな……後で話す」
 小声で付け加えられた言葉に、おそらく内密にしておきたい話なのだろうと判断する。
「それよりも、そいつの方だ」
 言葉とともにカガリはシンへと視線を向けた。
「死にはしないと思うが?」
 けがは急所を外れている。おそらく、明後日には普通に動けるようになるはずだ。
「でなければ困る」
 彼女は低い声でそう呟く。
「それと、そいつらだ。ただですむと思うなよ?」
 キラを傷つけた以上、と言うセリフには同意だ。しかし、カガリの言葉の裏には自分が考えている以上の怒りが見える。そして、ムウも同じような怒りを見せている。
 ひょっとして、自分が知らない理由があるのか。
 だから、カガリは『後で話す』と言ったのかもしれない。
 ともかく今はこの場の後始末が優先だろう。
「レイ。お前はラウに連絡を取っておけ」
 そこからプラント側の上層部に話を通しておいてもらえばいいだろう。
「こいつらに関しては、ミナに任せるのが一番だろうな」
 それはそれは楽しい結果になるはずだ。とてもイイ笑顔でムウがそう言う。それはきっと、ユウナには不幸な未来が待っていると言うことだろう。
「そうですね」
 本音を言えばせめて一発ぐらいはぶん殴りたい。カガリもそう考えているはずだ。
 後でミナに頼んでみようか。
 そんな考えがアスランの中に浮かび上がった。

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最遊釈厄伝