愛しき花

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「全部、お前が悪いんだ!」
 ユウナはそう言うとキラに銃口を向けてくる。
 それに、キラは思いきりショックを受けた。よかれと思ってやったことがそう受け止められるなどとは考えたことがなかったのだ。
 もちろん、キラだって地球連邦がコーディネイターにどのようは感情を抱いているかは知っている。それでも、戦争を終わらせたいという気持ちは同じだと信じていたのだ。
「逆恨みはいい加減にしろ!」
 カガリがそう叫ぶ。
「お前たちがオーブではなくブルーコスモスを見ていたから悪いんだろうが!」
 だから、オーブの民が反発をした。それだけのことだ、とカガリは言い返す。
「うるさい、うるさい! うるさい!!」
 ユウナはそう言うと引き金を引こうとする。
 だが、それをムウが邪魔をした。
「どうして、お前たちはみんな、僕の邪魔をするんだ!」
 本当にだだっ子のようだ、とキラは心の中で呟く。
 自分が気に入らないことは他人のせい。自分が悪いわけではない、と言いたげなその言動にあきれたくなる。
 同時に、自分を普通に育ててくれた両親や周囲の者達に感謝したくなった。さんざんあまた化されていた自覚はある。一歩間違っていれば自分もあちら側になっていたはずだ。
「邪魔なんかしてねぇよ」
 負けじとムウが言い返す。
「俺は自分の大切なものを守っているだけだ」
 彼はそう言いながらユウナの手から銃を取り上げようとがんばっている。だが、それを邪魔するようにまた人影が増えた。
「……やっぱ、一人じゃなかったか」
 ムウがいやそうにそう呟いている。
「キラ、気を付けろよ」
 カガリがこう声をかけてきた。
「うん。邪魔にならないようにする」
 そんな彼女に向かってキラはこう言い返す。
「そう言う話じゃないんだが……」
 カガリが小さなため息をつく。同時に彼女は近づいてきた相手を蹴飛ばす。
 キラも手近にあった消化器をつかむと、バランスを崩した相手の頭を殴りつけた。
「……手際がいいな」
 カガリが感心したようにこう言ってくる。
「ギナ様に教えてもらったから」
 もっとも、彼と一緒であれば自分の出番などなきに等しいが、とキラは付け加えた。
「そりゃ、ギナ様だからな」
 手加減をするはずはない。カガリも言い返す。
「そういえば『馬鹿を相手にしたときには股間を蹴飛ばせ』って言われたんだっけ」
 やってみるべきだろうか、とキラは続ける。
「後にしておけ。いやそうにしている人間がいるからな」
 また機会はあるだろう、と口にしながらカガリは倒れた相手の意識を完全に奪う。
「ムウさん! 後ろ!!」
 周囲のようすを見回していたキラは、思わずこう叫んでしまう。彼の背後にいつの間にか人影があったのだ。
 キラの叫びにムウが反応をする。しかし、その隙を突いてユウナがキラ達の方へと駆け寄ってきた。
「キラ!」
 シンの声が耳に届く。だが、それに言葉を返す余裕はない。
「お前たちが!」
 そう言いながらユウナは銃口を向けてくる。
 反射的にキラはカガリとユウナの間に体を滑り込ませた。
 ユウナの指に力がこもる。
 次の瞬間、銃声が響く。
 しかし、覚悟していた衝撃は襲ってこない。
 いったいどうして、と思いながらキラは改めてユウナの方を見つめる。だが、彼の姿が見えない。代わりにシンの後頭部が確認できた。
 彼の体がゆっくりと自分の方に倒れてくる。
「シン!」
 レイの声が耳に届く。その声には焦りのようなものすら感じられる。
 何があったのか。キラにはすぐに判断できなかった。

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最遊釈厄伝