愛しき花

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 停戦にかかわるスケジュールにとりあえずの同意を見た。
「とりあえず、一段落ついたか?」
 その事実にムウはこう呟く。
「これからが本番かもしれないがな」
 ラウが即座にこう言い返してくる。
「おそらく、停戦調停を邪魔しようとしてくるだろうからな」
 少しでも時間を稼げれば何とかなるのではないか。連中はまだその考えを捨てていないはずだ。
「馬鹿の捕縛もできていないようだし」
 あれが問題なんだよな、とムウは頭をかく。
「よっぽどの実力者がフォローしているのか。それとも、単に運がいいだけか。どっちだろうな」
 後者のような気もするが、と心の中だけで付け加える。
「思考が斜め上なんだろう」
 ラウはあっさりと切って捨てた。相変わらず身内以外はどうでもいいらしい。もっとも、相手があれであれば、自分も同じような反応をするだろうとムウも自覚している。
「問題はキラとカガリだが……」
「カガリはアスランがきっちりとフォローするだろうし、キラにはカナードがつくそうだ」
 先ほど、ギナから連絡があった。そう続ける。
「なら、あの子は大丈夫だな」
 カナードを出し抜こうとすれば、それこそMSが必要なのではないか。
 しかし、そんな大規模な作戦を行えば、ラウの耳に入らないはずがない。耳に入れば即座に対策を取るに決まっているのだ。
「だが、それこそ斜め上だからな」
 連中の考えは、とムウは付け加える。
「確かに。それが一番問題か」
 ラウもうなずき返す。
「とりあえず、要人の周囲には信用できるものをは位置したからね。当面は大丈夫だろう」
 それこそ、プラントごと破壊しようとしなければ、と彼は続けた。
「やなこと言うね、お前」
 顔をしかめながらムウは言葉を口にする。
「連中にその戦力はないだろう?」
「戦力はな。だが、人間、その気になれば何でもできるもんだよ」
 自分の命すら省みなければ、と続けた。
「それも含めて許すつもりはない」
 ラウはきっぱりと口にする。
「まぁ、がんばれ」
 苦笑とともにムウはそう言った。

 ラクスはスケジュールを確認しながらも小さなため息をつく。
「つまらないですわ」
 そして、小声でこう呟いた。
「ラクス?」
 何かを言ったか、とイザークが問いかけてくる。
「何でもありませんわ。スケジュールを確認していただけです」
 無意識のうちに声を出していただろうか、とラクスは首をかしげて見せた。
「……ならばいいが」
 とらえず、と彼は言い返して来る。もちろん、納得はしていないようだ。
「ともかく、一人で行動しないように。あなたに何かあった場合、プラント内が混乱しかねない」
 いいですね、と彼は念を押してくる。
「わかっているつもりです」
 不本意だが、と心の中だけで呟く。
「ただ、キラ様とまた話をしたいと思っただけです」
 その時間がとれないのが残念だと思っているだけだ。代わりにそう告げる。
「あいつは民間人扱いですからね」
 それでも、オーブ側はカガリと負けないくらいの警備体制を敷いているらしい。イザークはそう言った。
「停戦条約さえ結んだ後ならば、いくらでも時間がとれるだろう」
 それは正論かもしれない。
「だといいですけど」
 しかし、それにすぐに納得できない自分がいることにも、ラクスは気づいていた。

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最遊釈厄伝