愛しき花

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 いったい何をやっているのか。
 シンはそう思いながら目の前の者達をにらみつける。
「全く……状況を考えろよ」
 さらにそう付け加えた。
「……すまん」
「失礼しました」
 それで我に返ったのだろうか。イザークとラクスがすぐに矛先を納めた。
「ならいいけど」
 それにしても、この二人でも口論するんだ、と別の意味で感心する。
「わかったんならいいよ。キラはともかく、レイがぴりぴりしているからさ」
 彼が爆発するのが一番怖い。シンは真顔でそう言った。
「あぁ、そうだな」
 身に覚えでもあるのだろうか。カガリが即座に頷いてみせる。
「何かやったのか?」
 シンはその様子に思わず聞き返してしまう。
「馬鹿を一人、つるし上げただけだ。と言っても口でだがな」
 ぐうの音も出ないほどの正論で黙らせた。カガリはそう続ける。ただ、相手が馬鹿過ぎて、喉元過ぎれば熱さを忘れるだっただけだ。
 自分か許可を出したから、その後もしっかりと撃退していたはずだ。彼女はそう付け加えた。
「セイラン製の馬鹿か」
 アスランが吐き捨てるように呟く。
「あぁ。だから、後から話を聞いたミナ様も撃退許可を出したと聞いている」
 アスハとサハクから許可が出ている以上、セイランは文句も言えない。カガリはそう言って笑う。
「他にもあれこれあるが、まぁ、言わない方がいいだろうな」
 キラの耳に入るとまずい。苦笑を浮かべると彼女はそう言った。
「だろうな。レイがキラにばれるようなまねをするはずがないし、かといって手を抜くとも思えない」
 プラントで出会ってからしばらく一緒にいた。そのときに、自分のことを馬鹿にした連中がどのような目に遭ったか。シンは忘れていない。同時に、できるだけ彼を怒らせないようにしようと心の中で誓ったのだ。
 もっとも、それがキラのことにかかわると言うのであれば、自分だってそんなことは言わないが。
「……ニコルの同族、と言うべきか?」
「まぁ、そういうことにしておけ」
 きれいな顔をしているのに、とアスランとイザークは呟いている。
「ラウの親戚だからな。中身はよく似ている」
 カガリはそう言ってため息をつく。
「ムウに似ていれば、そう言った点ではもう少しマシだったんだろうが……」
 別の意味で頭が痛い、と彼女は言葉を重ねる。
「本当に、あそこの一族は癖がありすぎる」
 だからこそ、サハクと親しくできるのだろうが。カガリの言葉にどう答えればいいものか。
 何よりも、だ。
 カガリ達の死角にラウの姿を見つけてしまったのだ。
「癖があるというのはひどいね。必要だからこそ、やっているだけなのに」
 周囲に彼の声が響く。その瞬間、シンとラクス以外の人間が凍り付く。
「いつから……」
 カガリが何とか問いかけの言葉を口にする。
「確か『セイラン製の馬鹿』あたりから、かな?」
 つまり、彼らに対するカガリの感想はしっかりと聞かれたと言うことか。
「……やっぱ、性格悪い……」
 カガリはそう呟く。
「そうでなければザフトの隊長などやっていられないよ」
 小さな笑いとともにラウはこう言ってくる。
「それで、キラの様子はどうだね?」
 シンに視線を向けると、彼はこう問いかけてきた。
「とりあえず、あと一息みたいです。今日明日中に完成するんじゃないですか?」
 もっとも、誰も邪魔しなければ、だが。
「そうか。では、キッチンにあの子の好きそうなものを用意させておこう」
 引き続き、キラのフォローを頼む。ラウはそう口にする。
「わかりました」
 シンがそう言い返せば、ラウは小さく頷く。
「さて」
 視線を移動させると、彼はアスラン達を見つめる。
「君たちとはもう少し話をするべきだろうね」
 その言葉の裏に何ガクされているのか。それがとっても怖いと思うシンだった。

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最遊釈厄伝