愛しき花

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「キラ」
 一通り周囲のものをいじめて満足したのか。ギナは改めてキラへと視線を向ける。
「頼みがあるのだがな」
「なんですか?」
 ギナの言葉に何の疑いもなく彼女はそう言い返す。
「ウィルスを作って欲しいのだよ。地球軍の武器にだけ作用するの」
 できるであろう、と彼は続ける。
「不可能ではないですけど……データーが足りません」
 地球軍とザフトを区別する、と彼女は言った。
「それに関しては、そこにいる者達が用意するであろ」
 言葉とともに視線をラウとムウへと向ける。とたんに二人は苦笑を浮かべた。それは了承の意味だろうと勝手に判断する。
「何が必要なのじゃ?」
 確認のためにこう問いかけた。
「乱数表が。それがあれば、地球軍の暗号通信にだけ反応するウィルスを作れます」
 オーブのは持っている、と彼女は続ける。
「だ、そうだが?」
「すぐに用意をしましょう。地球軍のも含めて、ね」
 ラウはそう言って苦笑を浮かべた。
「でも、どうしてキラなんですか?」
 不意にカガリがこう問いかけてくる。
「カナードさんでも十分作れるでしょう?」
 言外に、彼女はキラを戦争にかかわらせることを避難して来た。彼女としてはそれは譲れないことなのだろう。
 しかし、だ。
 理由もなく自分がそんなことをさせるはずがない。
「カナードの能力では間に合わぬかもしれぬからの」
 ギナはそう言い返す。
「地球軍の中で、また、核兵器を製造しているという話しもある故」
 それを再び発射させるようなことがあってはいけない。だから、その前に叩きつぶすのだ。
「だから、我はオーブで最高のプログラマーに依頼をしただけよ」
 それがたまたまキラだっただけのことだ、と続ける。
「それとも、他によい人材を知っておるのか?」
 逆にこう問いかける。しかし、それにカガリは言葉を返せないらしい。
 それは当然だろう。
 キラ以上の実力を持ったプログラマーなどそうはいない。
「そういうことだ。頼んでかまわぬな?」
 改めてキラに問いかける。
「僕が作らないと、また、被害が出る可能性があるなら」
 だから、と彼女は続けた。
「よい子だ」
 ギナはそう言うと目を細める。
「もう二度と、このようなことはさせぬ。今回だけだ」
 だから、がんばってくれ。心の中だけでそう付け加えた。
「はい」
 キラは小さく頷く。
「カガリもよいな?」
 それを確認してから視線を移動させた。
「仕方がないですね……思い切り不本意ですが」
 被害を増やすわけにはいかないというのには同意だ。彼女は唇をとがらせながらもそう言う。
「それで、私は何をすればいいのですか?」
 その表情のまま、彼女はさらに問いかけの言葉を口にした。
「とりあえずは我とともに行動してもらおうか。その間、ムウはキラのそばについて俺。ただし、邪魔するでないぞ?」
 からかうようにそう告げる。
「するかよ」
 即座に彼は言葉を吐き出す。そう言うところが自分達に遊ばれる原因になっているなど彼は考えていないのだろう。
 本当に、さっさと戦争を終わらせて身内でのんびりする時間を作らなければいけない。そのためにはつまらぬことでも全力を尽くすしかないだろう。
 まずは何から手をつけるべきかとギナは考え始めた。

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最遊釈厄伝