愛しき花
58
どうやら、戦闘は終わったらしい。
その事実にキラはほっとする。しかし、アスラン達が無事なのかどうか。それがわからない以上、安心するわけにはいかないだろう。
「とりあえず、隊長達は無事みたいだな」
そんなキラの気持ちを読んでいたのか。どこかに連絡を入れていたシンがこう教えてくれる。
「アスランとイザークは、一度こっちに戻ってくるってさ」
近づきながら、さらに彼はこう続けた。
「レイは?」
「まだ先じゃね? あいつの仕事は今からが本番だろうし」
ニコルと一緒に行動をしているから、危険は少ないだろう。シンはそう言いきる。
「あの人、あんなかわいい顔しているのに結構強いから」
そう告げるシンの頬が微妙に引きつっているのがわかった。
「そうなんだ」
後でアスランにでも聞いてみよう。ひょっとしたらミナ様と同じような人種なのかもしれないし、とキラは心の中で呟く。
「そういえば、オーブの人たちはどうなるんだろう」
ふっと思い出してそう口にする。
「とりあえずはIDの確認かな? その後でオーブと相談することになるんだろうけど……ギナ様が近くにいるんだから、すぐ終わるんじゃないかな?」
サハクの船が迎えに来て本土に連れて行くのではないか。シンはそう言う。
「だよね」
しかし、自分はそれに乗って帰るのはまだ難しいだろう。それはキラにもわかっている。
でも、と思いながら口を開く。
「そのときに、少し、荷物を持ってきてもらうのは無理かなぁ」
自分の家から出なくてもかまわない。それでも、キラにだって愛用のブランドだってあるのだ。
「後で相談してみれば?」
シンがそう言ってくる。
「そうだね。終わったんなら、カナードさんが来てくれるかもしれないし。だめでもギナ様なら顔ぐらい見せてくださるから、そのときに相談してみよう」
そうしよう、と自分に言い聞かせた。
「だめでも、オーブ製のものならプラントでも取り寄せできるからさ」
慰めるようにシンがこう言ってくれる。
「うん。そうだね」
なければあれこれと探せばいい。キラはそう言って頷く。
「と言うことで、何か飲み物でももらってくるか?」
「……僕が自分でいければいいんだけどね」
「まだ殺気立ってる人がいるからな。隊長が戻ってこられればいいんだろうけど」
シンの言葉にキラは自分で取りに行くことをあっさりとあきらめる。
「悪いな」
よほどがっかりとした表情を作っていたのだろうか。シンがこう言ってきた。
「仕方がないよ。僕がイレギュラーなんだし」
わかっていたことではないか、とキラは続ける。
「そう言ってくれるならいいけど」
でも、やっぱり申し訳ない。シンはそう言った。
「プラントに行ったらあれこれ案内してもらうからいいよ」
楽しみにしている。そう口にすればシンはやっと納得してくれたらしい。
「任せとけ」
そう言って笑った。
「じゃ、行ってくるから。絶対に部屋から出るなよ。ついでに、誰も入れるな」
いいな、と念を押される。本気で過保護だよな、とキラは心の中で呟く。しかし、逆らわない方がいいのもわかっていた。
「大丈夫だよ」
キラはそう言い返す。
「パソコンいじっているし」
そうすれば、たぶん、外の音は聞こえなくなるから。そう言い返せば、シンが深いため息をつく。
「まぁ、いいけどな」
じゃ行ってくる、と改めて口にすると彼は部屋から出て行った。それを確認して、キラはパソコンのスイッチを入れる。
「あ、メールが届いている」
ギナからだろうか。そう呟くと、早速確認するために開いた。