愛しき花

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「ご苦労だったね、キラ」
 完成したプログラムを受け取って、ラウはそう告げる。
「元になったプログラムがありましたから」
 キラはそう言って微笑む。
「でも、本当にいいんですか? サハクの方々には連絡が取れますけど、それ以外とは通信できませんよ?」
 たとえばアスハとか、と彼女はさらにそう付け加える。
「十分だよ」
 それにラウは微笑み返す。
「近くにいるとすれば、間違いなくギナ様だろうからね」
 ミナの方は首長としてこなさなければいけない仕事がある。だから、と彼は続けた。
「……それはそうかもしれませんけど」
 でも、とキラは言葉を重ねる。
「それはそれで怖いです」
 別の意味で、と彼女はため息をつく。
「まぁ、この艦への被害は最低限に抑えられるだろうね。君がいるから」
 ラウは苦笑とともにそう言い返す。
「それも何なんだろう」
 キラがそう言って首をかしげた。
「君とカガリは我々のお姫様だからね。そのくらいは当然だろう」
 大切な存在だ、と彼は笑う。
 実際、キラがいなければ自分達は今こうしていられたかどうかはわからない。
 何よりも、自分達の恩人だった女性が彼女たちを『守って欲しい』と言ったのだ。かなえないわけにはいかないだろう。
「それよりも、艦内での生活には慣れたかな? いろいろと不自由をかけているとは思うが」
 本来ならば、そろそろ、本国へ行かせた方がいいのだろう。しかし、ラクスの一件がある以上、タイミングが計れないのだ。
「とりあえずは、困ったことはないです。シンもレイもあれこれ時にかけてくれているから」
 運動もできているし、とキラは続ける。
「個人的には、お肉はいらないから、サラダをたくさん食べたいけど、それはわがままでしょうから」
 小さな声で彼女はそう付け加えた。
「食事に関してはね……軍人はどうしても質より量だからね」
 妥協してもらうしかないだろう、とラウは続ける。
「代わりに、プラントではおいしいケーキの店に連れて行ってあげるよ」
 それで妥協して欲しい。そう告げれば、キラは小さく頷いて見せた。
「いい子だね」
 そう言ってラウは彼女の髪をなでる。
「……あの、アスランは?」
 聞いていいのか、わからないけれど。キラはそう付け加えながらラウの顔を見上げてくる。
「任務中だよ。手が空いたら顔を出すように言っておこう」
 それでかまわないね? と問いかけた。
「無事なら、それでいいです」
 慌てたようにキラはそう言い返してくる。
「お仕事の邪魔をしたいわけではないし」
 彼女はさらにそう付け加えた。
「彼の方も君の様子を確認したいだろうしね」
 気にすることではない。ラウはそう言って笑った。
「本当はもう少しいろいろと話をしていたいのだが……残念だが、時間だ」
 隊長というのはいろいろと忙しくてね、と肩をすくめてみせる。
「わかりました。仕方がないですね」
 キラもまたこう言い返してくれた。物わかりがよすぎるというのも問題かもしれない。そんなことも考えてしまう。
「補給船が来たら、すぐにプラントに移動できるからね」
 それまで我慢してくれ。そう言うしかないラウだった。

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最遊釈厄伝