愛しき花

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 補給中に急襲を受けたからか。アークエンジェルは物資不足だ。その中でももっとも急を要するのは水の補給だと言っていい。
「……そのくらいならば協力してやらなくもない」
 ムウの言葉にカナードはそう言い返す。
「お前たちだけならば放っておくが、今、この艦にはカガリとオーブの民間人がいるからな」
 貴様らが解放してくれていればお互いに楽だったのだろうが、とイヤミもしっかりと付け加える。
「俺もそう思うんだがな」
 ムウはそう言って苦笑を浮かべた。
「あちらさんはそう考えていないようだがな」
 それが誰のことかは今更確認しなくてもわかってしまう。
「せめて、あれを何とかしてくれませんか?」
 カナードはそう問いかけた。
「あいつのあの態度では協力する気にもなれない」
 吐き捨てるようにそう告げる。
「あぁ……だろうな」
 あいつはなぁ、と彼もため息をつく。
「由緒正しい軍人の家系だそうだ」
 つまり、思考もしっかりと染まってると言うことだろう。それはそれで不幸なのだろうか。
「俺たちには関係のないことですね」
 相手がどんな経歴の持ち主だろうと、とカナードは言い返す。
「まぁ、お前さん達ならそう言うよな」
 頭をかきながらムウは苦笑を浮かべる。
「あいつも少しは状況を考えてくれるといいんだが」
 無理だろうな、とその表情のまま続けた。
「どっちにしろ、お前さんが協力してくれるなら、少なくとも整備陣関係は抑えるが」
「ブリッジと現場の隔絶が大きくなりますね」
 カナードはそう言い返す。
「それを何とかするのも、俺の役目なんだろうな」
 面倒くさい、と彼は呟く。
「あきらめるんですね」
 カナードはあっさりと受け流す。
「そう言うと思っていたよ」
 ありがとう、と彼はため息をつく。
「ともかく、お前は俺と行動を共にしてもらう。カガリ嬢ちゃんには悪いが、こっちで待機だ」
 それがどのような思惑からの指示なのか、簡単に想像がついてしまう。
「……あいつにかすり傷一つつけてみろ。ただでは済まさない」
「わかってる。信用できる人間をそばに置いておく」
 安心しろ、と彼は言う。
「それについては、とりあえず信用しておく」
 彼がそう言うのであれば大丈夫だろう。カナードはそう判断しておく。
「あれは動かさない方がいいんだろうな」
 視線をストライクへと向けながら彼はそう続けた。 「いや。あれで出てくれ」
 その方が都合がいい。唇の動きだけで彼はそう告げてくる。それは何か思惑があると言うことか。
 あるいは、彼がこの近くまで来ているのかもしれない。
 ムウが一緒に来るというのも、彼とこっそりと連絡を取ることを見逃すためではないか。
「あんたらが、それでかまわないというのならばな」
 そんなことを考えながら、こう言い返した。

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最遊釈厄伝