愛しき花

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 いい加減、何とかしてこの艦を逃げ出さなければいけないのではないか。カガリはそう考えている。
 しかも、だ。
 ここ数時間、部屋の外から伝わってくる空気が不穏だ。
「そろそろ、だな」
 同じ部屋にいたカナードがこう呟いている。
 普通、同じ部屋に異性を放り込むか? とカガリは思う。だが、相手がカナードであれば話は別だ。彼が自分にそう言う感情を向けてこないと言うことはわかっている。
「カナードさん?」
 それよりも気になるのは彼の言葉だ。
「何かあると?」
 確認のためにカガリは問いかける。
「そろそろ限界だろうからな」
 まぁ、よく我慢した方だ。カナードはそう付け加えた。
「何かやったんですか?」
「俺はなにもしていないぞ」
 カナードは即座にこう言い返してくる。
「あの双子がお前たちの安全の確保に動かないと思っていたのか?」
 さらに彼はこう付け加えた。
 確かにその可能性は考えていた。しかし、だ。
「だから、カナードさんが来たんじゃないんですか?」
 少なくとも、自分はそう考えていた。カガリは隠すことなくそう言い返す。
「お前のことは、言葉は悪いがついでだ。俺の目的はあれだった」
 それが何を指しているのか、カガリにもわかる。
「……他に誰か来ていた、と言うことですか?」
「ギナ様がな」
 キラのことがあったから、と彼は苦笑とともに続けた。
「俺も人のことは言えないが、あの人は一番あいつのことに関しては過保護だ」
 無事にプラントまでたどり着けるかどうか。それを確認しようと考えていたのではないか。カナードはそう続ける。
「そうでなければ、新型の奪取などと言う楽しい役目を俺に譲るはずがないしな」
 彼の場合、とカナードは笑った。
「うわっ……否定できない」
 カガリは即座に言い返す。
「まぁ、アスランもいるようだから、心配はいらないと思うが」
 さらりととんでもないことを彼は口にしてくれる。
「あったんですか?」
「あぁ。一応、あの人にも連絡してあるぞ」
 だから、この艦が外部に通信できないようにしているのではないか。
「とっととヘリオポリスから出てくれれば、後はいくらでも方法がある、と考えているんだろう」
 あちらも動くだろうし、とカナードは笑う。
「そのとき、民間人の保護はお前の役目だぞ」
 わかっているな、と彼は念を押してきた。
「もちろん。それは当然のことだ」
 自分の立場であれば、とカガリはうなずく。
「艦内の厄介な連中は俺が引き受けることになるだろうが……問題は、タイミングだな」
 何とかしてギナかラウと連絡が取れるようにしなければいけないだろう。カナードはそう続ける。
「まぁ、それもそこにいる人の協力があれば簡単だろうが」
 そう言いながら彼は視線をドアの方へと向けた。
「全く……一応気配は消していたんだぞ」
 言葉とともにムウの姿が現れる。
「そのくらいできないと、意味がないでしょう?」
 それにカナードは笑い返した。
「このじゃじゃ馬の面倒を見ているんですから」
「そう言うことにしておくか」
 何か釈然としないものを感じるのはどうしてだろう。それについては後で確認させてもらえばいいか。
「で? 何をすればいい?」
 今、優先しなければいけないの派別のことだ。そう考えながら、彼女は問いかけた。

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最遊釈厄伝