愛しき花

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「サハクの、って言うならカナードさんかなぁ」
 アスランの問いかけに、キラは少し考え込んだとこう言った。
「お二人の指示がなくても自由に動けるのはあの人ぐらいだよ」
 二人に認められるくらい実力があるのも、と彼女は続ける。
「おかげで、何度も助けられたし」
 そう付け加えたのは、間違いなく無意識だろう。しかし『今のは聞き捨てならない』とシンは顔をしかめる。
「セイランあたりか? 犯人は」
 かすかに眉根を寄せながらアスランがキラに問いかけた。
「まぁ、そうだね」
 隠すつもりはないのか。キラはあっさりとうなずいてみせる。
「ここ一年ほど、僕の顔を見るたびに『ボクの愛人になるか、アズラエル家の人間と婚約するか、好きな方を選んでいいよ。寛大でしょう?』と言ってくれたから」
 そのたびにカナードはおろかサハクの双子には〆られ、カガリには足蹴にされているのに懲りないというのは感心していいのだろうか。キラはそう付け加えると首をかしげてみせた。
「ひょっとしなくても、その状況になれただろう、キラ」
 もう少し危機感持てよ、とシンはため息をつく。
「一年前、か」
 アスランはアスランで何かを考え込むような表情を作った。
「キラさんのご両親が亡くなられた後ですね」
 それに答えるかのようにレイが口を開く。
「そうか……」
 その事実にきな臭いものを感じたのは自分だけではないのではないか。シンは心の中でそう呟く。
「カガリから『馬鹿がウザイ』というメールが来たのは、そういうわけか」
 納得した、とアスランはうなずいて見せた。
「しかし、それならお前がプラントに来てよかったのか? 勝手に話を進められるようなことは?」
「ないと思うよ。ウズミ様も、僕の気持ちが最優先だっておっしゃってくださっているから」
 それに、とキラは続ける。
「僕の後見人はウズミ様だけじゃなくてサハクのお二人もだから」
 彼ら全員の同意を得なければ勝手に話を進められない。
「いくらセイランでも、それは不可能じゃない、かな?」
 少なくとも、ユウナには無理だろう。キラはそう続ける。
「ユウナって、確か、あの外見だけじゃなく頭の中身も軽そうな奴だよな?  記憶の中を探りながら、それらしい人物の特徴をシンは口にした。
「カガリさんによく殴られてた……」
「そうだよ」
 キラは苦笑を浮かべるとうなずいてみせる。
「そうですか」
 シンはそう言って低い笑いを漏らす。
「とりあえず、何を考えているか想像はつくが……カガリに相談をするまではやめておけ」
 後々ややこしいことになる。アスランがこう言ってきた。
「そのときは、俺も参加させてください」
 レイも笑いながら口を挟んでくる。
「それ以前に、カガリさん一人で突撃しないように頼んでおかないと」
 さらに彼はこう続ける。
「あぁ。あいつなら一人で病院送りにしかねないからな」
 それでは自分達がつまらない。アスランはそう言う。
「どうでもいいけど、あまりカガリをたきつけないでね」
 ため息混じりにキラがこういう。
「気を付けよう」
 アスランは笑いながらうなずいてみせる。
「しかし、カナードさんか。サハクの双子に認められているなら、かなりの手練れだな」
 キラに何かあれば殴り込みに来られかねない。気を付けないと、とアスランは呟く。しかし、その言葉の裏に別の意味が隠れているような気がするのは錯覚ではないだろう。
「まぁ、キラは俺が守るけどな」
 何があろうと、とシンは宣言するように口にした。

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最遊釈厄伝