愛しき花

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「しかし、いつまでここにいるんだろうな」
 イザークがこう呟く。
「確かに。さっさと本国に戻った方がいいんじゃないか?」
 それにディアッカもうなずいている。
「おそらくだが」
 アスランが静かに口を開く。
「隊長は新造艦の動きを警戒しているのではないか?」
 下手に地球軍に合流されては困る。そう考えているのではないか。さらにそう付け加えた。
「可能性はありますね。機体は奪取してきましたけど、実験データーは残っているはずです」
 それにニコルもうなずいてみせる。
「と言っても、あのOSをどうにかしなければ意味はないと思いますが」
 彼はさらに言葉を重ねた。その言葉の裏にさりげなくとげが潜んでいるあたり、本当に彼らしいと思う。
「OSはいざとなればどうにでもなる。地球軍にも同胞はいるらしいからな」
 不本意だが、とミゲルが口を挟んできた。
「ただ、隊長があれの動きを気にしているというのは事実だ」
 こう言いながら、彼は意味ありげな視線をアスランへと向けてくる。
「カガリ、か?」
 アスランはそう呟く。
「それだけじゃないだろうがな」
 ミゲルが苦笑とともに言い返してきた。
「なら、どうしてさっさと攻撃しないんだ?」
 ディアッカが不思議そうに問いかける。
「今ならば簡単に制圧できるだろう?」
 さらに彼はこう続けた。
「もう一度ヘリオポリスに攻撃を仕掛けるのはまずいだろう」
 あそこにいるのはほとんどがオーブの民間人だ。そんな彼らをまた危険にさらすのはまずい。最悪、プラントとの関係が最悪なものになるのではないか。
 アスランは言外にそう告げた。
「そうだな。出てきてからの方が遠慮がいらない」
 イザークも珍しくアスランに同意をしてみせる。
「もうしばらく我慢しろ。たぶん、先に耐えきれなくなるのはあちらの方だ」
 それに、とミゲルは続けた。
「お嬢ちゃんのことも考えろ」
 さすがに二度目となればショックが大きいだろうから、と彼は言葉を重ねる。
「うまく行けば、慰霊団に合流できる。彼女にそちらに移ってもらえば後は楽だろうし」
「……慰霊団、ですか?」
 何のことか、とニコルが問いかけた。
「ラクス嬢がユニウスセブンの慰霊のために本国を出たそうだ。状況が許せば、合流できるだろう……と言うことらしいが」
 それに言葉を返したのは、どうやら事前にラクスから連絡をもらっていたらしいイザークだ。
「さすが婚約者。詳しいな」
 茶化すようにディアッカが言葉を口にした。次の瞬間、彼は思いきり張り倒される。
「ラクスならばキラを預けても安心だな」
 アスランは、ひょっとしたら自分の婚約者になっていたかもしれない少女の顔を思い出しながら、こう告げた。
「ラクス嬢も、彼女のことを気に入るだろうしな」
 イザークもそう言ってうなずく。
「ともかく、俺たちがここであれこれ言っても仕方がない。後は隊長の指示を待つだけだ」
 締めくくるようにアスランはそう言った。
「そういや、お前たちの機体、使い物になるのか?」
 ミゲルが話題を変えるように問いかけてくる。
「とりあえずは」
「まぁ、何とか」
「大丈夫だろう」
「隊長から回していただいたデーターがなければ危なかったですけどね」
 それぞれがこんな言葉を返す。
「そうか。ならば、あてにするぞ」
 ミゲルはそう言って笑う。
「了解」
 自分のためにもキラのためにも、無事にカガリを助け出す。アスランはそう心の中で呟く。問題があるとすれば、あのときのパイロットが誰か、だが。
「キラなら知っているか?」
 後で確認してみよう。心の中でそう付け加えていた。

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最遊釈厄伝