愛しき花

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「さて」
 キラが出て行くと同時に、ラウは雰囲気を変える。アスラン達にしてみれば、こちらの方がなれていると言っていい。と言うよりも、先ほどまでの彼は本当に自分達が知っている《ラウ・ル・クルーゼ》なのか。そう疑いたくなったほどだ。
「アスランとミゲルが見かけた新型は、地球軍の新造艦に収容されたそうだよ」
 しかし、ラウのこの言葉でその考えは吹き飛んでしまう。
「本当ですか?」
「残念だがね」
 もっとも、と彼は意味ありげな笑みを浮かべる。
「パイロットはサハクの人間で、その人物以外使えないようにしてくれたそうだがね」
 だから、地球軍がとりあえずあれを使うことはできない。だが、とラウは続けた。
「困ったことに、ヘリオポリスの民間人の一部とカガリ嬢もあの艦に収容されたらしい」
 おそらく、彼を利用するためだろう。彼の言葉にアスランの表情がこわばる。
「キラは?」
 反射的にアスランはそう問いかけた。
「もちろん伝えていないよ。これからも伝える気はない」
 知ればおとなしく保護されていてくれないだろう、彼女は。ラウの言葉にアスランはうなずく。
「同じ理由でシンにも伝えていない。皆も口を滑らせないように」
 いいね、とラウは念を押すように続けた。もちろん、それは当然のことだ。
「わかってます」
 ミゲルが代表するようにそう言葉を返す。
「では、アスラン達は奪取してきた機体を使えるようにしておけ」
 何があるかわからないから、とラウは付け加えた。
「何かあると隊長は考えておられるのですか?」
 ニコルがそう問いかける。
「あの艦は時期にヘリオポリスから出航するだろうからね」
 そこを拿捕する、とラウは言い切った。
「そのときに自分達が開発してきた機体が敵として現れれば、彼らはどんな反応をすると思う?」
 さらに彼はそう言葉を重ねる。
「……嫌がらせですね、それは」
 ミゲルが苦笑とともに口にした。
「そのくらいはしてもかまわないと思うのだがね。連中の言動を考えれば」
 ラウはそう言い返す。
「何よりも、オーブの民間人が捕まっている以上、我々としては彼らを助けることを優先すべきではないかな?」
 そうすることでオーブの民間人がプラントに好意を持つかもしれない。自分達にとってそれは必要なことではないか。
 ラウのこの言葉に、アスラン達も同意をする。
「それでは、それぞれの任務に戻りたまえ」
 それは解散を示唆する言葉だ。
「隊長。一つよろしいでしょうか」
 アスランがあることを確認するために口を開く。
「何かね?」
「自分は、ヴェサリウスでどの部屋を使えばよろしいのでしょうか」
 荷物を移動させる関係上、それを確認しておきたい。
「キラの隣を使いたまえ」
 シンにもそう伝えるように。彼はそう付け加える。それは、あちらに戻る前に一度、キラ達の顔を見ていいという許可だろうか。
「わかりました」
 違ったとしてもかまわない。そう解釈できたと言えば、彼は笑って済ませるだろう。アスランはそう判断をする。
「アスラン。あれの移動は大丈夫か?」
 何なら運んでやろうか、とミゲルが声をかけてきた。
「大丈夫だ。そのくらいは動くだろう」
 アスランはそう言い返す。
「それに、その程度のことができなければ、今後困るだろうしな」
 さらにそう付け加える。
「だよな」
 まぁ、がんばれ。そう言うミゲルに、アスランはうなずき返した。

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最遊釈厄伝