愛しき花

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 アスランが乗った機体が合流してくる。
 しかし、だ。
 その後を追うようにもう一機、データーにない機体が姿を見せた。
「アスラン?」
『イレギュラーだ。予定にない機体があった』
 あるいは、味方にすら存在を隠されていたのか。アスランはそう続ける。
「つまりは、あれは敵と言うことか」
 ミゲルはそう問いかけた。
『その可能性が高い、と言うことだ。モルゲンレーテの職員の可能性もあるからな』
 アスハもしくはサハク関係者の、とアスランは続ける。そうであれば、下手に手出しできないとも。
「厄介だな」
 確かに、今は彼らを敵に回すわけにはいかない。
「体調が一緒なら、判断を仰ぐこともできたんだろうが」
 ここからでは無理だ。
「まぁ、いい。お前は早々にここから離脱しろ。ついでに、お姫様の護衛でもするんだな」
 他のメンバーとともにヘリオポリスを離脱している、とミゲルは続けた。
「俺も手に負えないようなら一度離脱する。その上で体勢を整えて再挑戦するしかないな」
 もっとも、あれがオーブの手に渡るならそれでいい。
 彼らは決して、それを攻撃のために使うことはないだろう。
 だが、万が一と言うこともある。だからこそ、ラウに相談しなければいけないのだ。
「とりあえず、その機体はまだ完全ではない。だから、さっさと行け!」
 ミゲルは怒鳴りつけるようにそう言った。
『気を付けろよ』
 アスランはそう言うと、その場から離れていく。
「さて……あんたはどう出るかな」
 ここでアスランを攻撃するようなら遠慮はしない。だが、引き下がるようならこちらもそうするだけだ。
 そう考えながら、相手を見つめる。
 すると、相手は『行け』というような動きを見せた。
 いったい何を考えているのか。
「……まぁ、俺としても無駄な戦闘は避けたいからな」
 それでも、相手が背後から撃たないとは限らない。だから警戒だけは怠らないようにしなければいけないのではないか。そう考える余裕はミゲルにもあった。
「どちらにしろ、厄介なことになりそうだ」
 小さな声でそう呟く。
 同時に、仲間達への撤退の合図を上げる。
「じゃぁ、な」
 きっと、またどこかで会うことになるだろう。そのときには容赦しない。そう呟くと、ミゲルはそのままジンをジャンプさせる。
 こういうときに、飛行機能がないのは辛いかもしれない。
「やっぱ、そのあたりのことを考えてもらわないとな」
 こういうときに不便だ。
 おそらくだが、これから地球上での作戦の機会が増えるだろう。
 そのときに、迅速な移動はできないのはまずいのではないか。
 ジンが初投入されたときとは違い、あちらもそれなりに警戒をしているに決まっている。
「とりあえず、無事に退避することを優先するべきだろうな、今は」
 余計な事を考えている間に撃ち落とされては意味がない。
 だが、相手は本当に自分達に攻撃を加えるつもりはないようだ。
「……何を考えているんだろうな」
 あいつは、とミゲルは呟く。
 今、あの機体を見逃したことを後悔しないといいのだが。そんなこともまた、考えていた。

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最遊釈厄伝