愛しき花
11
耳慣れない音がする。
そう認識すると同時に、キラは周囲を見回していた。
「……あれって……」
次の瞬間、信じられないものを見つけてしまう。
「ザフトの……」
どうして、と彼女は呟く。
「モルゲンレーテで地球軍のMSが建造されていたから、だよ」
シンがさらりととんでもないセリフを口にしてくれる。
「シン?」
「ちなみに、その情報を教えてくれたのはサハクだからな」
さらに彼はこう付け加えた。
「じゃ、カガリも今日のことは知っていたの?」
ヘリオポリスが攻撃されることは、とキラは続ける。
「どうだろうな。何かあるとは思っていただろうけど」
カガリがどこまで知っていたのか。自分にもわからない。知っているとすれば、アスランだろうが。シンはそう付け加えた。
「俺はキラを守って安全にプラントに連れて行くことが役目だから」
レイについては本人の意思次第だ。そう言われている。彼はそう言ってキラを見つめてくる。
「頼むから、今は何も言わずについてきてくれないか。必ず、俺が守るから」
そして、真剣な表情で彼はそう告げた。
「それに、みんなも、民間人には極力被害を出さないようにするつもりだ。地球軍はなにもしなければの話だけどな」
連中が民間人を盾にしなければ、と続ける。
「あいつらなら、そのくらいやりますね」
憎々しげな口調でレイもシンに同意をして見せた。
「自分達以外は《生きている道具》と考えているでしょうね」
その言葉にはしっかりととげが含まれている。
「……セイランかな。仲介をしたのは」
それにしても、何を考えているのだろう。それとも、最後までごまかせると考えていたのか。
サハクの双子相手では無理なのに。そう心の中で呟く。
「カガリ、大丈夫だよね」
今、モルゲンレーテに行ったけれど、とキラは付け加えた。
いや、モルゲンレーテにいるのは彼女だけではない。その事実を思い出した瞬間、キラは反射的にきびすを返していた。
「キラ!」
「キラさん?」
どうしたのか、と二人が言外に問いかけてくる。
「みんながモルゲンレーテに行っている!」
早く安全な場所に避難をさせないと、とキラは叫んだ。
「攻撃があった時点でシェルターに避難しているはずです。だから、大丈夫」
レイがキラの腕をつかみながらそう言う。
「それに……今から行く方が危険だ」
シンもそう言いながら、キラの肩をつかむ。
「大丈夫。カガリさんが何とかしているって」
彼はさらにそう付け加えた。
「……でも……」
「キラのクラスメートなら一目で学生だってわかる年齢だろう? だから、心配いらない」
ここに来ているのはみんなトップの連中だから。シンはそう言うが、今ひとつ安心できない。
だが、今の自分には何もできないというのも否定できない事実だ。
「わかった……信用する」
小さな声でキラはそう言う。
「……ごめん」
そして、ありがとう。シンがそう言うと同時に、彼らの前にザフトのMSが降り立った。