愛しき花
10
モルゲンレーテが見える森でキラ達はエレカを下りた。
「本当にここでいいのか?」
一人エレカに残ったカガリがこう問いかけてくる。
「あぁ。ちょっと歩くけど、別にかまわないだろう?」
そう言いながらシンは確認するようにキラ達へと視線を移動させた。
「僕は大丈夫だけど……」
キラはすぐにこう答えてくれた。
「俺も、だ」
当然だろう、とレイは笑う。
「そうか。では、大丈夫だな」
カガリはそう言って笑う。
「では、私は行くぞ」
迷いを振り切るかのように彼女は視線を移動させる。
「気を付けてね、カガリ」
そんな彼女に向かってキラはそう告げた。
「無茶はだめだよ」
お願いだから、と彼女は続ける。その言葉は、単なる注意なのか。それとも、これから起こることを察しているのか。どちらが正しいのだろう、とシンは思う。
「わかっているって。お前が帰ってくるまでは元気でいるさ」
そんなキラに向かってカガリは明るい口調でそう言い返した。
「あいつとのこともあるしな。約束する」
この言葉に、キラはようやく安心したような表情を作る。カガリもそんなキラの表情を確認すると、柔らかな笑みを浮かべた。
「じゃぁ、な」
その表情のままこう言うと、彼女はエレカを発進させる。
「俺たちも移動しましょう」
ある程度エレカが離れたところで、シンはキラにそう声をかけた。
「そうですね。その方がいい」
レイもそう言ってうなずく。
「荷物、預かりますよ?」
さらに、彼はこう言うと同時に手をキラの方に差し出した。
「大丈夫だよ」
自分で持って行ける、とキラはすぐに言い返す。
「預かってもらってください。この先は結構険しいですよ」
両手を使わなければいけないかもしれない。シンは言外にそう告げた。
「それとも、俺が背負っていきましょうか?」
シンがからかうように問いかける。
「いいよ」
大丈夫、とキラは言い返してきた。
「でも、荷物は頼んだ方がいいかも」
不安そうな表情を作るとキラはこう言ってくる。
「わかりました。では、荷物は俺が。キラさんが疲れたときにはシンに頼むことしましょう」
レイは笑いながらこう口にした。
「俺はそれでかまわないけど……キラは?」
「……そのときに考える」
キラはため息とともにこう言ってくる。
「じゃ、そういうことで」
できれば早めに白旗を揚げて欲しい。だが、キラの性格では無理だろうな。そう考えながら、シンは先頭に立って歩き出した。