愛しき花
09
まさか、ここで邪魔が入るとは思わなかった。
しかもだ。あそこまでしつこいとは、何か思惑があるのではないか。そう思わずにいられない。
「さっきのあいつは、誰だ?」
同じことを考えているのか。カガリがそう問いかけている。
「フレイ? サイの婚約者、だったかな?」
それにキラがあれこれと思い出そうとしながら言葉を返していた。
「彼がゼミに連れて来たんだ」
そこで知り合った、とキラは続ける。
「フルネームは?」
さりげなくレイが口を挟む。それはシンも知りたいと思っていたことだ。きっと、それを察して彼が先回りしたのだろう。
「フレイ・アルスターだよ」
しかし、キラの口から出た名前にある可能性が結びつく。
「アルスターか」
カガリが吐き捨てるように呟いた。
「この前けんかした大西洋連合の事務次官と同じ家名だ」
気に入らない、と彼女は続ける。
「たぶん、それ、フレイのお父さんだよ」
キラはあっさりとこう言ってくれた。
「それは本当か?」
「うん。サイが言っていたから」
フレイからは聞いたとがないが、とキラは続ける。それはきっと、自分でも知られたときにどうなるかわかっていたからではないか。
「……そうか」
カガリはその一言だけを口にする。
「それについては、後で確認だな」
彼女はそう続けた。
「まぁ、今回のことには関係ない、と思いたいな」
今回の計画がばれていたわけではない。カガリはそう付け加える。
「それはないと思うけどな」
シンはそう呟く。
「連絡用のメールは、キラが作った暗号ソフトを使っていたし……あれを解析するのはザフトでも無理だったしな」
確認してもらったけど、と付け加えた。
「モルゲンレーテでも無理だったらしいぞ。馬鹿が自爆してくれた」
あれはあれで楽しかった、とカガリは言い返して来る。
「なら、地球軍でも無理か。ならば、偶然、と言うことになるのか」
それとも、ただのカンなのか。カガリはそう言って顔をしかめる。
「……フレイのことなら、ここ最近、毎日だよ」
試験が近いから、とキラは言う。
「そういえば、かなりまずいと聞いたことがありますね」
レイもうなずく。
「もっとも、自業自得だと思いますよ。あれだけ遊んでいれば」
さすがはレイ。そう言いたくなるくらい辛辣なセリフを口にしてくれる。
「だから、ここしばらくのことは間違いなく切羽詰まっての行動だと思うぞ」
彼はさらにそう付け加えた。
「なるほど」
それならば『今日だから』という可能性はないと考えた方がいいだろう。それでも、警戒だけはしておくべきか。
「そういえば、あちらの方はどうなっている?」
ふっと思い出した。そんなそぶりでカガリが問いかけてくる。
「現在、進行中です」
彼女にはこれで十分伝わるだろう。
「わかった」
なら、急がないとな。カガリはこう呟く。
「そうですね」
それにシンだけではなくレイもうなずいて見せた。