秘密の地図を描こう
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デッキにフリーダムを固定する。
「やっぱり、あれはガイアだよね」
しかもバルトフェルドがつかっている機体だ。しかし、彼はエターナルに移っていたはず。
「何かあったんだ、やっぱり」
キラはかすかに眉根を寄せるとそう呟く。
「でも、どうしてみんな、教えてくれないんだろう」
戦闘が終わったのに、とさらに言葉を重ねた。
「キラ? 下りて来なさい」
そのときだ。すぐに下りてこないキラを心配したのか。外からラウが呼びかけてくる。
「はい」
一人で悩むこともできないのかな、と思いながらもうなずく。
しかし、とすぐに思い直す。
一人でなければ相談をすることもできる。その方がいい。そう心の中で呟く。
「やはり、疲れていたようだね」
ハッチを開ければ、ラウが苦笑を浮かべているのは見えた。
「しかし、まだ疲れることが待っているようだよ」
ため息とともに彼はそう付け加える。
「バルトフェルド隊長もいらしているようですか……」
いったい何が、と思いながらキラは聞き返す。
「自分の目で確認するのが一番だろうね」
全く、と忌々しそうな口調で彼は言葉を吐き出した。
「ラウさん?」
意味がわからない。そう思いつつもキラは口を開く。
「危ないことでも何でもないのですね?」
それは、と言いながら、彼のそばに移動した。
「私個人には厄介と思えることだがね。少なくとも、他の人間はそう判断しないだろう」
このセリフに、ますます疑問がわき上がってくる。
「自分の目で確認しないといけないわけですね」
結局、とキラは結論づけた。
「それが一番だと思うよ」
「わかりました」
とりあえず、ここにはみんながいる。だから、何かあっても対処してくれるのではないか。
そう判断をして、ハッチを蹴る。そのまま、皆がいる方へと移動していく。
もちろん、その隣にはラウがいる
それだけで心強いと思えるのは、自分が彼に甘えているからだろうか。
「キラ、こっちだ」
そんな彼の動きに気づいたのだろう。バルトフェルドが手招いてみせる。
「はい」
足場を蹴ると、キラは方向を変えた。
そうすれば、バルトフェルドのそばにマリューとネオ、それにマードックがいるのがわかる。
いや、彼だけではない。
ミリアリア達もだ。この場にいないのは、最低限のブリッジクルーだけではないだろうか。それも、今回、オーブ軍から来た者達だ。元々アークエンジェルに乗り込んでいた者達は全員、ここに集まっているような気がする。
本当に何があったんだろう。
そう考えながら、床に降り立つ。
「戻ってきたな、坊主」
その瞬間、聞き覚えがあるセリフが耳に届く。しかし、それは二度と聞くことはない、と思っていたそれだ。
「……ムウさん?」
反射的にそう問いかける。
「心配かけたな、坊主」
それに答えるかのように彼は笑う。
しかし、キラはそれにすぐ言葉を返せない。あまりのことに思考がフリーズしている。
「……何で?」
ようやく出た出たセリフがこれだ。