秘密の地図を描こう

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 ラウが操縦しているドラクーンのおかげであの機体の弱点が見えたような気がする。
「ラウさん」
 これ以上、引き延ばすとフリーダムはともかく他の機体がまずいことになりかねない。だから、とキラは彼に呼びかけた。
『何をすればいいのかね?』
 即座に彼は聞き返してくる。
「あれのあごの下に攻撃をしたいので」
『なるほど。上を向かせたいと言うことだね』
 最後まで言葉を口にする前にラウがこう言い返してくれた。
「はい」
 それがこういうときには楽だと思う。
『任せておきなさい』
 ラウのこの言葉とともにドラクーンが一斉に動き出す。その数は《彼》のものより多いし、操作も優先ではない。
 しかし、その存在が《彼》を思い出させる。
 フォローのタイミングは特に、だ。
 それでも、ラウと彼を混同することはない。ラウとレイが別の人物であるように、である。
 今の自分にとって《彼》よりもラウの方が信用できるのも、そのせいだろうか。
 そんなことを考えながら、タイミングを計る。
「未だ!」
 まだ、完全に上を向いたわけではない。しかし、今の角度であれば十分、あのビーム砲の資格を狙える。
「駆動系を破壊すれば、後は何とかなる」
 説得するのに手間がかかるかもしれない。それでも、ラウは何とかしてくれるはずだ。
 そう思いながら、キラはビームサーベルを抜く。
 そのまま、首のライン――センサーと駆動系がある――を切断した。さらに、背中の動力源とのラインも破壊する。
 中途半端な姿勢で相手の機体が動きを止めた。
 爆発でバランスが崩れたのだろう。そのままゆっくりと後ろに倒れていく。
 その瞬間、大きな爆発が起きた。
「パイロットは!」
 しまった、と思いながら、キラはそう叫ぶ。
『安心しなさい。脱出装置が働いている』
 倒れる直前、射出された。ラウがそう教えてくれた。
『あれは私が拾っていこう。君は、周囲を確認していなさい』
 さらに彼はそう続ける。
「ラウさん!」
 危険ではないのか、とキラは言外に告げた。
 確かに、あの二人には約束をした。しかし、そのために彼がけがをするのはいやだ、とも思う。
『大丈夫だよ。白兵戦の訓練も受けているからね』
 むしろ、キラのフォローをしないですむだけ楽だ。彼は苦笑とともにそう言ってきた。
「……すみません……」
 確かに、白兵戦では戦力になるどころか足を引っ張るしかできないことは自覚している。
『気にしなくていい。私も君はそのままでいてほしいしね』
 これは慰めなのだろうか。それとも、と心の中でため息をついてしまう。
 その間にも、彼のアストレイはゆっくりと降下していった。
「何もなければいいけど……」
 できれば、パイロットが気絶をしていてくれればいい。そうすれば、一番手間がかからないかもしれない……とまで考えてしまう。
「ラウさんだから、大丈夫だよね」
 自分に言い聞かせるようにそう呟く。
 その願いが叶ったのか。パイロットの確保は想像以上簡単にすんでくれた。


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最遊釈厄伝