秘密の地図を描こう

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 大股に三人の元へと歩み寄っていく。
「キラ、お前は!」
 いったい、何をしに戻ってきたのか。開口一番、そう問いかける。
「カガリを守るため、かな?」
 そして、オーブを……と彼は言い返してきた。
「それで、戦場を混乱させた訳か?」
「一応、事前に連絡はしているよ」
 自分達が何をしようとしていたのかは、と彼はさらに付け加える。
「少なくとも、ザフト側にもオーブ側にも、人的被害は出していないはずだよ」
 機体は多少損傷させたかもしれないが、と口にする彼の態度に怒りを感じてしまう。
「お前!」
「そういう君は、何をしたいの?」
 いや、何をしようとしていたのか……とキラは逆に聞き返してきた。その声音には感情らしきものが感じられない。
「キラ……」
「どうして、君がザフトに戻ったのかは知っている。でも、そこで何をしたいの?」
 彼の瞳がまっすぐに自分の瞳を見つめている。それにアスランは居心地悪さを感じていた。
「俺は……」
「ギルさんもラウさんも、そして、アークエンジェルのみんなも、僕たちが何をしたいかを知っている。だから、協力をしてくれているんだよ?」
 同時に、彼はいつ、こんな強さを身につけたのか。そう思わずにいられない。
 プラントで再会したときも、それ以前も、彼にはある種の弱さがつきまとっていた。しかし、今はそれが感じられない。
「なら、お前は何をしようとしているんだ?」
 だが、そんな彼を自分は知らない。そう考えながら、逆に聞き返す。
「僕は、これ以上、無駄な戦いをしてほしくないだけ。僕たちはオーブを撃たせたくないんだ。戦って、死ぬと言うことは……もう戻らないと言うことだから……」
 何よりも、オーブは中立を保っていなければいけない。第三の選択肢を選びたい人のために……とキラは続けた。
 それは正しいかもしれない。だが、それが妙に腹立たしい。
「きれい事を言うな! お前の手だって、既に何人もの命を奪っているんだぞ」
 だからなのだろうか。絶対に彼に向けてはいけないとわかっていたセリフを口にしてしまったのは。
 実際、キラはあの頃のような弱々しい表情を浮かべている。それに『しまった』と思ってももう遅い。
「知っている……だからもう、本当にいやなんだ、こんな事」
 静かな声で、彼はそう言う。
「キラ……」
 すぐにでも謝らなければ。そう思うのに言葉が出てこない。
「撃ちたくない……撃たせないで……」
 そう告げる彼の隣で、カガリとミリアリアがアスランをにらみつけている。
「キラ、俺は……」
 このままではいけない。
 それがわかっているのに、何故……と自分でも考えてしまう。
「いい加減にしろ、アスラン!」
 だが、先に行動に移ったのはカガリだった。
 この言葉とともに一息に近づいてくる。そして、そのまま腹部にパンチを入れてきた。
「ぐっ!」
 また鍛えたのか。そう言いたくなるほど重い衝撃が伝わってくる。
「今のは、お前の口が滑っただけだ……とはわかっている。しかし、それがキラにどんな衝撃を与えるのか。それがわからない、とは言わせないぞ!」
 しかも、謝るのにぐだぐだと悩んで……と彼女は続けた。本当に、よくわかっている……と思わずにいられない。
「今の失言をどう繕うのか。それを考えつくまで、私たちに接触するな!」
 いいな、と彼女は続けた。
「かっこいいわ、カガリさん!」
 ミリアリアが称賛の声を上げている。
「カガリ……ずいぶんと雄々しくなったね」
 キラのそれは感心しているから出たセリフなのだろうか。
「馬鹿が多いからな」
 それにカガリは平然と言い返している。
「安心しろ。白兵戦の時は私がお前を守ってやる」
 でも、確かにその気持ちもわかる……と心の中で呟きながら、アスランは意識を手放した。

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最遊釈厄伝