秘密の地図を描こう
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「あきれましたわね」
カガリの話を聞いたラクスがそう口にしている。
「全く……何をしているんだか、あいつも」
キラ不足でちょっとおかしくなっているらしい、というカガリのセリフは正しいのかもしれない。それにしても、と思わずにいられない。
「だから、自重したんだぞ。これがユウナなら、遠慮なく股間を蹴り上げている」
だが、さらに付け加えられた言葉には苦笑しか浮かばない。
「カガリ……それはやめて」
自分も男だから、とキラがため息とともに告げる。
「確かに。男としては切実な問題だな」
それは、とバルトフェルドですら頬を引きつらせていた。
「だから、やるなら俺たちの前で言わないでくれ」
どんな相手だろうと同情したくなる、と彼は付け加える。
「そういうものなのか?」
意味がわからない、とカガリは女性陣に確認するように問いかけていた。
「さぁ……」
訳がわからない、とラクスは首をかしげている。
「そういうものらしいわよ。一度は経験しているから、と言っていたわね」
トールが、と続けるミリアリアの視線は遠くを見つめていた。いや、彼女だけではなくキラも、だ。
それがどうしてなのか。気にならないわけではない。しかし、聞いてはいけないとも感じる。それは、キラの表情からも判断できた。
「でも、個人的には大歓迎よ。そういう馬鹿にはきちんと報復をしてあげないとね」
にっこりと微笑みながらミリアリアは言い切る。
「わかった。そう言うことなら、お前たちの前でだけ言うよ」
カガリはそう言って納得をする。
「しかし、アスランは何とかしたいですわね」
カガリの拳だけではまだまだ不十分ではないか。ラクスはそう告げる。
「そう、かな?」
「そうですわ」
キラの言葉にラクスはしっかりとうなずいて見せた。
「ちょうどいいですわ。ミーアさんが地球に来るそうですから、連絡を取ってみましょう」
うまくいけば、入れ替わることができるかもしれない。そう言ってラクスは微笑む。
「ミーアさん、一人で来るのかな」
「いえ。メールにはデュランダル議長もご一緒だと書いてありましたわ」
その言葉に、キラが確認するように視線を向けてきた。
「本当だそうだよ。私も先ほどメールを受け取った」
ニコルを同行させるらしい。そう続けたときに、自分がどのような表情をしていたのか。確認しなくてもわかってしまう。
「あら、それはすてきですわ」
ラクスがそう言って笑みを深める。
「……ラクス……」
そういう性格だっけ? とキラが真顔で問いかけた。
「いいではありませんの」
アスランのセリフは許せないから、と彼女は言い返す。
「だそうだが?」
バルトフェルドが意味ありげに問いかけてくる。
「それに関しては、いくらでも非難を受けますよ。そのほかのことも、ね」
あの頃の自分は間違っていた。それはわかっていても、自分がしたことには責任をとらなければいけないだろう。ラウはそう言い返す。
「……つまらん」
そう言われて非難できる人間がどれだけいるか、と彼はため息をつく。
「バルトフェルド隊長」
キラが慌てて彼の名を呼ぶ。
「安心しろ。ただのコミュニケーションだ」
しれっとして言い返す彼に、ラウは苦笑を深める。
「そうだよ、キラ。実力行使に出られないだけマシだよ」
カガリの一撃を受けたら、しばらく落ち込むだろうが……とラウは言い返す。
「……カガリ、しないよね?」
反射的に問いかけるキラはかわいいと言うべきなのだろうか。
「そいつにする理由がないからな、今のところ」
安心しろ、と言葉を返すキラも困ったような表情を作っている。
「まぁ。これからはわからないけどな」
「気をつけよう」
そう言い返すしかできないラウだった。