秘密の地図を描こう

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 ブリッジに近い場所にあるギルバートの部屋に着いたのはそれからすぐのことだ。
 その隣が艦長であるグラディスが使っている部屋だろう。では、ギルバートの部屋を挟んでその反対側の部屋には誰がいるのだろうか。
 ふっとそんな疑問がわき上がる。
「議長。アイマンです」
 そんな彼を尻目にミゲルが声をかけた。
『待っていたよ。入ってくれたまえ』
 即座に中からギルバートの返事が届く。
「失礼します。ついでにこいつも拾ってきました」
 言葉とともに彼はアスランの体を引きずり込む。そうすれば、室内の様子が確認できた。
「散らかっていてすまないね。こういう状況なのでやらなければいけないことが多いのだよ」
 苦笑とともにギルバートはそう告げる。
「……それも、仕方がないことだと思いますが?」
 現状では、と言い返言い返す。同時に、ひょっとして隣の部屋も彼が使っているのではないかと判断をした。
「それで、何のご用でしょうか」
 こう問いかける。
「先ほどの礼をまずは言っておきたくてね」
 それと、と彼は続けた。
「アークエンジェルのクルーについて、少し聞いておきたいことがあったのだよ」
 ちょっと気になることがあってね、と告げられた言葉に、アスランは眉根を寄せる。
「あぁ。安心してくれていい。彼らの現状が知りたいわけではない。人となりを確認したいだけだよ」
 キラの治療に関して、と彼はさりげなく手持ちのカードを開いて見せた。
「キラの、ですか?」
「そう。キラ君の、だよ。彼の場合、ストレスと体調が大きく関係を持っているようなのでね。その理由をまずは突き止めておきたい」
 そこから対策をとった方が早そうだ、と彼は続ける。
「本人に聞いてみたのだが、適当にごまかされるしね」
 困ったものだ、とギルバートはため息をつく。
「ニコル相手でも白状しませんでしたからね」
 苦笑とともにミゲルがそう言ってくる。何故、彼がそう言ったのか、動機で学んだアスランにはわかっていた。
「キラは、妙なところで意地っ張りだから」
 ため息とともにアスランはそう呟く。
「あいつが本音をぶつけられた相手と言えば、ラクスかフラガさんぐらいだったと」
 フラガについてはまだ理解できた。不本意だが、あの日々にキラをすぐそばでかばい、支えていたのは彼らしいのだ。
 キラを戦いに巻き込んだのは彼でもあるらしい。だから、気に入らない、と思っていた相手はある。同時に魅力的だと感じていたことも否定できない。
 何よりも、彼は自分達よりも一回りも年上だった。
 だから、キラが自分ではなく彼に本音を漏らしていたとしても我慢できた。
 しかし、ラクスは……と心の中で呟く。ともに過ごした時間は自分よりも少ないはずなのに、何故……と言いたくなるくらいだった。
「……なるほど、ね」
「しかし、フラガさんは、すでになくなられていますから……」
 艦内の様子と言われても、自分が知っている程度のことは他の者達も知っているのではないか。
「ディアッカの方がいろいろと見ていたかもしれません」
 キラだけではなくフラガも見ていたから、とアスランは少しだけ悔しさを覚えながらそう言った。
「なるほど。では、今度聞いてみよう」
 すまなかったね、とギルバートは微笑む。
 今ならば、大丈夫だろうか。そう思いながらアスランは口を開く。
「それで……キラは、今……」
「元気だよ、とりあえずは。ただ、何が引き金になって体調を崩すかわからないのが現状だよ」
 そうなると、すぐに対処をとらなければいけない。そう言うと同時に、彼は眉間にしわを作る。
「今回のことは彼にとってみれば特にまずい……彼の主治医としてはすぐにでも帰りたいところだが、議長としてはそうもいかないからね」
 信頼できる人間が彼のそばに付いている。だから、安心していると言えば安心しているのだが、と続けた。
「そう、ですか」
 つまり、対処がとれない状況で彼を連れ戻すのは難しいと言うことなのだろう。
「まぁ、今回のことが終われば会えるって」
 ミゲルがそう言いながら彼の背中を叩いてくる。
「それまでは、俺は無理でもニコルが責任を持って虫退治をすると思うぞ」
「……あいつならやるだろうな」
 確かに、そう言うことなら彼が一番手なれている。
 それでも、とアスランは心の中で呟く。彼の顔を見られればそれだけでいいのだ。
「お話がそれだけでしたら、部屋に戻らせていただきたいのですが」
 カガリが気になる、と言外に付け加える。
「次に時間が空いたときには、姫と話をさせていただきたいと伝えてくれるかね?」
「わかりました」
 とりあえず、今聞いたキラの話を彼女に伝えなければいけない。そう考えるとそのままきびすを返す。
「またな」
 そんな彼にミゲルがこう声をかけてくる。それに彼はうなずき返すと部屋を後にした。

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最遊釈厄伝