秘密の地図を描こう

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 アスランの姿がドアの向こうに消えたところで、ミゲルはギルバートへと視線を戻す。
「キラの様子は?」
 自分が彼らの部屋に行くと目立つ。そういう理由で、追撃に出てから直接顔を見ていない。そう言った意味ではアスラン達と同じ立場だろうか。
「微熱が続いているよ。残念だが、ここではベッドに縛り付けておくぐらいしか対策がない」
 困ったことに、とギルバートはため息をつく。
「まぁ、ラウが付いているから大丈夫だと思うがね」
 そのあたりの事情を一番よく知っているのが彼だ、と目の前の人物は言葉を重ねる。
「もっとも、こちらにすれば彼の助言を得られないと言うことでもあるが」
 だが、それはどうにでもなる。
 自分だって、それなりの経験を積んでいるのだ。
「副長がおとなしくしてくれていれば何とでもなりますけどね」
 アーサーが騒ぎ出すと周囲がパニックになる。それでは適切な判断が下せなくなるのではないか。
「成績だけでは人ははかれない、と言うことだね」
 困ったものだ、とギルバートは言う。しかし、何故か彼は楽しげだ。
「まぁ、そのあたりも場数をふめば何とかなるだろうね」
 それよりも、と彼は続ける。
「私たちがどうやって本国に戻るか。そろそろ、その方法を考えないといけないかもしれないよ」
 最悪、自分達だけでも。そう続けられた言葉から、キラが置かれている状況の悪さを推測した。
「確か、このあたりにはイザーク達がいたはずです。あちらと合流できれば何とかなるかと」
 どちらかが追撃を続けるにしても、片方は本国に帰還できるだろう。
「そうだね」
 確かにそうだ、とギルバートは言う。
「問題はもう一つあるのだよ」
 ここだけの話だが、と彼は続ける。
「どうやら、あちら側にエンデュミオンの鷹本人か、それに近しい人間がいるようなのだよ」
 それも確認しなければいけない。そう告げた。
「マジ、ですか?」
「残念だがね」
 ムウとキラ、そしてレイは彼の存在を感じ取れるのだという。それがどうしてなのかじゃ、彼らの出生段階におけるある条件故、としかいえないが……と彼は続けた。
「簡単に言えば、彼らはある意味、兄妹のようなものなのだよ」
 詳しく説明することはできないが、と言われてミゲルはうなずく。
「理屈はともかく、現実としてそうならば、自分はかまいません」
 同時に、先ほどのアスランの言葉の重さが認識できた。もっとも、言った本人はそれを認識していないだろうが。
「……君なら、そう言ってくれると思っていたよ」
 ギルバートがそう言ったときだ。彼の手元の端末が反応を見せる。
「私だ。どうかしたのかね?」
 即座に彼は問いかけた。
『すまないね……ばれた』
 苦笑とともに相手がこう言い返してくる。
「ばれた……とは、キラ君にかね?」
『あぁ……あの二人がこの艦に乗っていると気づかれてしまったよ』
 さて、どうする? と彼は笑いを漏らしながらそう言った。
『ちなみに、今は私の膝の上でにらんでいるがね』
 そうしなければ部屋を抜け出そうとするのだろう。
「……仕方がない。アイマン君?」
「隊長の手伝いに行ってきます」
 とりあえずキラをなだめて来ます、とミゲルは続けた。
「お願いしよう」
 自分もすぐに行くから、とギルバートは言う。
「了解しました」
 それにうなずくとミゲルは足早に隣へと移動をしていった。

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最遊釈厄伝