秘密の地図を描こう

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隣にいる彼女へと視線を向けながら、アスランは口を開く。
「わかっているな、カガリ。今回の目的は……キラじゃない」
 個人的にはそうしたいが、と心の中だけで付け加えた。
「わかっているが、わかりたくない」
 それに彼女はこう言い返してくる。
「カガリ……」
 頼むから、と思わず呟いてしまう。
「キラは、私の弟だぞ? 今となっては、唯一の肉親だ……そばにいたいと思って何が悪い!」
 アスランの呼びかけの意味がわかっているはずだ。それでも、さらにこう言ってくる。
「……カリダおばさまがいらっしゃるだろう?」
 キラとカガリにとっては本当の叔母だ。
「わかっている! でも……叔母様は叔母様で、キラじゃない」
 カリダは大切な存在だが、キラとは違うのだ……と彼女はさらに付け加えた。
「……それでも、今はキラを優先すべきじゃない」
 カガリはオーブの代表としてプラントに行くのだ。
「ここで失敗をすれば、二度とあいつをオーブに呼び戻せなくなるぞ」
 さらにこう言葉を重ねる。
「わかってる!」
 それは、と彼女は言い返してきた。
「どうして何の情報も私たちに渡されないんだ?」
 せめてそれだけでもわかれば我慢できるのに、と彼女は続ける。
「……セイランがどこまで食い込んでいるか。あちらにはわからないからだろう」
 自分達でもまだ完全につかめないのだ。仕方がない、とアスランは言い返す。
「プラントでも、連中が何かをしでかしたらしい、と聞いたし」
「……なんだ、それは」
 自分は知らないぞ、とカガリが言う。
「俺も、はっきりと確認したわけじゃない。ただ、ラクスがミリアリアから聞いたそうだ」
 その情報の発信源はディアッカだろう、とアスランは考えている。
「あちらにしても、あまり大事にしたくないのだろう」
 国として抗議をすれば、最悪、二国間の関係が断絶しかねない。それで困るのは民衆だ。
「……だから、カガリもうかつなことは言うなよ?」
 揚げ足をとられるわけにはいかない。
「……わかっている」
 彼女は小さくうなずく。それでも、まだどこか不満げだった。

 報告を聞いて、ギルバートは深いため息をつく。
「仕方がないね。君たちではできないというのであれば」
 その瞬間、目の前にいた者達が身をすくめる。
「だが、こちらかも条件を出させてもらうよ」
 それがのめないのであれば、今回の話は却下するがかまわないね? と続けた。
「仕方がありません」
 彼らも渋々ながらうなずいてみせる。
「ならば、近いうちに対策がとれるように手配をしよう」
 あちらにはミゲルとレイがいる。キラにはニコルをつけてやればいいのではないか。
 本当はラウが付き添ってくれれば一番いい。
 しかし、彼も表に出ない方がいい人材だ。
「……近くまでならかまわないか?」
 それについては後で本人に相談すべきだろう。
「これについては、それでかまわないね?」
「はい」
 確認を求めれば、すぐに言葉が返ってくる。
「では、次の議題に行ってかまわないかな?」
 そう言いながら、次の書類に手を伸ばす。
「……地球軍には大きな動きは見られませんが、ブルーコスモスのテロが頻発している様子です」
 それにこんな言葉が返される。
「……そうか」
 そろそろ限界なのだろうか。だが、ここであきらめるわけにはいかない。まずは何をすればいいのか、とギルバートは心の中で呟いていた。

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最遊釈厄伝