秘密の地図を描こう
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レイの悩みは《シン・アスカ》のことだった。
「確か……フリーダムを憎んでいたという少年だったね?」
確認するようにラウは言葉を口にする。
「はい……もっとも、それはきちんと片が付いたのですが……」
言葉とともにレイが深いため息をつく。
「今度は別の意味でキラさんに執着しているようで……会わせろと言ってきているんです」
キラのことはできるだけ内密にしなければいけないのに、と彼は続けた。
「まぁ、他の誰かであれば考慮をしなかったとは言いませんが……」
シンはだめだ、と彼は言い切る。
「何故、かな?」
「……あいつは、自分の気持ちが優先ですし……」
無意識にキラを傷つける言葉を口にするのではないか、とレイは続けた。
「大丈夫だよ、心配しなくても」
キラがそう言ってくる。
「そう思っているのはキラさんだけです!」
だが、それを即座にレイは却下した。
「確かに、否定はできないね」
しかし、それはラウも同意見だからあえてこう告げる。
「ラウさんまで!」
キラが泣きそうな表情でこう言ってきた。
「残念だが、これに関しては引き下がらないよ」
苦笑とともにラウは言い返す。
「それにしても……その少年のことは気になるね」
どういう意味で彼はキラに執着をしているのか。それを確認しなければいけないのではないか。
「……ミゲルに、時間があるときに顔を出すように伝えてくっるかね?」
いろいろと確認したいこともある、とラウはレイに向けていった。
「アイマン隊長に、ですか?」
「あぁ。今日、ニコルが来てね。なかなかおもしろい話を聞かせてくれたのだよ」
だから、彼にも聞かせてあげようと思ってね……と続ける。
「……ラウさん、怖いですよ、その笑顔」
引きつった表情でキラが言葉を口にした。
さらにレイが追い打ちをかけてくれた。
「ひどいね、二人とも」
それにわざとらしいため息を返す。
「そう言うことはギルにいいなさい、ギルに」
彼ならば適任だろう、とラウは付け加えた。
「それも十分ひどいと思いますけど?」
小さな声で、キラが指摘してくる。
「本当にそうかな?」
彼にはぴったりだと思うが、と聞き返す。
「……ギルは立場が立場だからではありませんか?」
「議長だもんね。性格も悪くなっても仕方がないのかも」
それに二人はそれぞれこんな言葉を口にする。
「二人とも。否定していないよ、それでは」
そう指摘をすると、彼らはお互いの顔を見合わせた。
「だって、ねぇ」
「否定できませんから」
それに、否定する方が失礼かもしれない。キラはそう続ける。
「まぁ、あの男は好きでやっているからね」
でなければ、自分達を守るためでも《最高評議会議長》などという地位に就くはずがない。
「久々にあれとも連絡を取るか」
面倒で放っておいたが、とラウは呟く。
「それもひどいですよね?」
キラの言葉にレイも同意をするように首肯する。
「本当に仲がいいね、君たちは」
それにこう言い返すだけにとどめておいた。