秘密の地図を描こう

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 彼の目が開いている。その事実にレイはほっと安堵のため息をついた。
 その瞬間、冷静さが戻ってきたのだろうか。彼の周囲に漂っている空気に気づいた。
「何が気に入らないのですか?」
 思わずこう問いかけてしまう。
「それを君が聞くのか?」
 とげを含んだ声がすぐに帰ってくる。
「全く……お前といい、彼といい、ギルまでもが人の意思を無視して何をしてくれるのか」
 自分はあのときに死ぬつもりだったのに、と彼はため息をついて見せた。
「でも、俺は……生きていてほしかったんです、あなたに」
 そうすれば、もう一度話ができる。
 しかられた子供のようにうつむきながら、レイはそう付け加えた。
「……君といいキラといい……何故、そんなに私と話をしたがるのか」
 理由がわからない、と彼は続ける。
「それは、ラウがラウだからです」
 そうとしか言いようがない、とレイは言い返した。
「……それに、あなたが今ここにいてくれると言うことは……俺にも未来があると言うことですから」
 それだけではだめなのか、と思わず付け加えてしまう。
「確かに、それはそうだね」
 ため息とともにラウがうなずく。
「ともかく、生き残ってしまったことは仕方がない。ここまでされてもう一度死を選ぶのも馬鹿馬鹿しいしね」
 だからこそ、愚痴ぐらいは許してほしい。彼はそう続けた。
「ギルになら、いくらでもどうぞ」
 ためらうことなく、レイはそういう。
「でも、キラさんはやめてくださいね」
 ラウの治療にも関わって、体調が万全ではない。その上、身柄も狙われているのだ。いつ、心労で倒れてもおかしくはない。
「ギルぐらい図太ければ大丈夫だと思うけど」
 ぼそっとそう付け加えた瞬間だ。ラウが盛大に吹き出す。
「ずいぶんと辛辣なセリフだね」
 ギルバートに対しては、と彼は笑いながらつげた。
「昔の君は、彼の服の裾を握って話さなかったものを……成長したと言うべきか」
 そうなのだろうか、とレイは首をかしげる。
「しかし、キラ君とは……また厄介な相手を好きになったものだね」
 いろいろな意味で、と彼は言う。
「……好きになってはいけないのですか?」
 確かに、キラを好きな人間は多いが……とレイは聞き返す。
「わからなければいいよ」
 教えられてどうこするものではないからね、と彼は口にした。
「いずれ理解できるだろう」
 言葉とともに彼は体から力を抜く。
「ラウ?」
 ひょっとして具合が悪いのだろうか。そう考えて声をかける。
「疲れただけだよ。さすがに体力が落ちているようだね」
 困ったものだ、と彼は続けた。
「少し眠ればよくなるよ」
 こればかりは一朝一夕にはどうにもならない。それはレイもわかっている。
「とりあえず、目が覚めたらまた話をしよう。今度は彼も交えてね」
 今後のことも話し合わなければいけないだろう。彼は続けた。
「はい」
 確かに、それは必要なことだろう。しかし、そこにキラを同席させていいものかどうか。
「安心しなさい。もう彼はいじめないよ」
 矛先は別の人間に向けよう。そう言う彼にレイは苦笑を返した。

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最遊釈厄伝