秘密の地図を描こう

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  04  



 人気がなくなった廊下をまっすぐに歩いて行く。そして、目的の部屋の前で足を止めた。
「遅かったな」
 そのまま中に足を踏み入れれば、即座に声が飛んでくる。
「ちょっと、な」
 その声の主に、レイは曖昧な言葉を返す。
「まぁ、いいけど」
 興味がないから。彼はそう言うと、ベッドへと体を横たえた。
「ただ、ルナが騒いでいたからな。覚悟しておけよ」
 今日は一緒にあれこれとやる予定があっただろう? と彼は続ける。
「俺は『是』と言った記憶はないんだがな」
 違うか? レイは聞き返した。
「相手はルナだからな。それが耳に届いていたと思うか?」
 彼はため息混じりにそう言う。
「全く……俺にも予定というものがあるんだがな」
 いろいろと、とレイは呟く。
「まぁ、いい。無視すればいいだけだ」
 できるかどうかは別にして、と心の中だけで付け加える。しかし、キラのことはまだ広めるわけにはいかない。そして、今、彼を守れるのは自分だけだ。
「がんばれよ」
 自分はフォローしない、と彼は口にする。
「そうか……俺はお前のフォローをしてやろうと思っていたんだが」
 とりあえず、今日の課題について……とレイは笑う。
「レイ!」
 マジ? と言いながら彼は体を起こす。
「嘘ではないが……お前がフォローしてくれないのに、俺だけがフォローするのはおかしいと思わないか、シン」
 そんな彼にきれいに作った笑みを向けながら問いかける。
「……レ、レイ……」
 焦ったような表情で彼はレイの名を呼んだ。
「まぁ、がんばれ」
 先ほど彼が口にしたのと同じ言葉を投げかける。
「そんな!」
「Give & Takeだろう? 普通は。だが、お前のセリフだとGiveGiveじゃないか」
 自分にとって何のプラスにもならない。レイはそう続けた。
「お前のフォローは今までにさんざんしてきたし」
 これ以上はしなくてもいいだろうか、と真顔で問いかける。
「頼むから、そんなことは言わないでくれよ」
 あれこれまずいんだから、と彼はすがりつくように言う。
「自力でがんばるんだな」
 もう何もしない、と口だけ言ってみる。結局は手伝うことになるのは目に見えているのだが、それでもたまにはいじめるのもいいだろう。
 と言うよりも、毎回、当てにされるのも困る。
「そんなこと言わずにさ……明日、ルナをごまかすのを手伝うから」
 な、と彼は本当に困ったという表情を見せた。
 そんな言動に既視感を感じてしまうのはどうしてだろう。
 そう考えて、キラと自分の関係に似ているからではないかと思い当たる。もっとも、ここまで彼の手を煩わせてはいないはずだ。
 逆に、彼の方が手がかかるような……と心の中で呟く。
 それでも、シンとは違ってキラ相手であれば無条件で手を貸したいと思う。
 もっとも、こんなことを考えていると本人に知られるわけにはいかない。そんなことになれば、彼はどれだけすねてくれるか。それこそ、ギルバートでなければなだめられないような気がする。
 あるいは、まだ目が覚めない《彼》だろうか。
「なぁ。レイ!」
 そんな彼の意識を真の声が現実に引き戻す。
「そうだな。お前に責任を押しつけてもいい、と言うのであれば考えよう」
 どうする? と聞き返した。
「……どうするって……」  さすがに矢面に立つのはいやなのか。シンは一瞬、言葉に詰まる。
「シン?」
「わかったよ! やってやるよ!!」
 レイの問いかけに、彼は開き直ったようにこう叫んだ。

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最遊釈厄伝