空の彼方の虹

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 こんな状況でも優雅さを失わない、と言う点は見習うべきなのだろうか。カガリは目の前の相手の仕草を見つめながらそう考える。
「ラクス?」
 それ以上に、こんなまねをして彼女の立場は大丈夫なのか。
「わたくしがカガリとともにいた間に、父とザラ様の間で意見の相違が見られたのだそうですわ」
 彼女の言葉をどう受け止めたのか。ラクスはゆっくりと口を開く。
「その中に、あの方々の《遺産》に関することもあったそうです」
 それが何を意味しているのか。当然、カガリにもわかった。
「なるほどの」
 ギナが深いため息とともにうなずく。
「今ならば、ここにキラとカナードだけではなくカガリもいるからか」
 パトリック・ザラはどこまでこちらの情報をつかんでいるのだろうか。彼はそう続けた。
「ギナ様?」
 カガリは不審そうに彼の顔を見つめる。
「……お前の実の親に関係していることだ」
 そうすれば、ギナは渋々と言った様子で言葉を返してきた。
「詳しいことはウズミに聞くがいい」
 自分の口から離すことではない。彼はそうも続ける。
「キラ達は、知っているんですか?」
 それについて、と問いかけてしまう。
「カナードはな。キラはお前より少し詳しいだけだ」
 だからといって、聞きに行くでないぞ。彼はそう続ける。
「本来であれば、知らせる予定はなかったのだがな」
 まだ、とギナは言う。
 つまり、予定外のことがあってキラがその情報を入手してしまった、と言うことか。
「ともかく、お前はまだ知らぬ方がよい。そうすれば、万が一の時にもあちらの欲しいものを渡さずにすむからの」
 カガリには腹芸は無理だ。そう断言されても反論する気にもなれない。いや、自分でも自覚をしているから、否定できない。そう言った方が正しいのかもしれない。
「……それだけ重要なことですのね?」
 ラクスがそう問いかけてきた。
「そうですね。万が一、ブルーコスモスに知られたら、コーディネイターはそれこそ奴隷への道を歩むしかなくなる」
 もちろん、とギナは続ける。
「プラントで正しい方法で使えば、コーディネイターが現在持っている問題を解決することができるだろうの」
 そこまで言うのか。そう思わずにいられない。同時に、かなり重要なことだとカガリにも理解できた。
「だが、パトリック・ザラがそうするとは限らん」
 彼は一度、それを手にするために取ってはいけない手段を執った。その事実がある限り、自分達は彼を受け入れられない。
 ギナにそうまで言わせるとは、いったい、何をしたのだろうか。
 しかし、今はそれを問いかけるときではない。
「つまり、私たち三人がそろっているから連中は動いた、と言うことでいいのですか?」
 カガリは代わりにそうといけた。
「そういうことになるの」
 ギナはあっさりとうなずいてみせる。
「お前たちには関係があるからな」
 それが、自分の実の両親に関わることだ、とは確認しなくてもわかっていた。
「……だが、お前はアスハの後継だからな。プラント側としても、今まではうかつに手出しできなかった、と言うことだ」
 もっとも、とギナは笑う。
「今だと手、うかつにて出さしさせるつもりはないがの」
 もちろんキラとカナードにも、と彼は付け加えた。
「微力ながらお手伝いさせていただきますわ」
 ラクスもそう言って微笑む。
 そのときだ。
「ギナ様!」
 大使館の文官が言葉とともに飛び込んでくる。
「ザフトの兵士が一人、侵入してきました!」
 この言葉に、ギナはかすかに眉根を寄せた。
「遅かれ、早かれ、くるとは思っておったが……一人とは、よほど腕に自信があるのか?」
 それとも馬鹿か、と彼は吐き捨てる。
「……その兵士は、カガリ様に会わせろと言っております。ラクス嬢を迎えに来たとも」
 このセリフを耳にした瞬間、カガリはため息をつく。
「馬鹿決定だな」
「そのようですわね」
 ラクスもそう言うと、あきれたようにため息をついて見せた。


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最遊釈厄伝