何故、カガリと一緒に外出をすることになってしまったのだろう。キラにはその理由がわからない。 しかし『命令だ』といわれてしまえば、逆らうことができない。 「……不満そうだな……」 小さなため息をついたところで、カガリがこうつっこんでくる。 「結局は、荷物持ちだからね」 しかも、みんな、妙に細かい買い物リストを寄越したし……とキラはため息をついて見せた。 「何言っているんだ! 一番厄介なリストを寄越したのは、お前の彼女だぞ!」 「フレイ?」 「そうだ」 こんな辺境に、オーブの高級化粧品なんて売ってるわけないだろう……とカガリはぼやく。 「……要するに、余計な成分が混じっていなければいいだけなんだけど……」 防腐剤だの香料だのが入っているのがいやなんだって……とキラは苦笑とともに告げる。もっとも、それはフレイ本人だけのためではないのだが。しかし、それを彼女に悟られるわけにはいかない。 「あぁ、なるほど。そういうことならわかる」 キラの説明に、カガリが頷いてみせる。 「……えっ?」 申し訳ないが、彼女がそういうことを気にする人間だ、とは思えなかったのだ。何というか、フレイと違って肌の手入れや何かをしているようには見えない、といった方が正しいのか。 「何だ? 何か文句あるのか?」 そんなキラの不信がわかったのだろう。カガリがにらみ付いてくる。 「自分で使わなくても、周囲に女が三人以上いれば、いやでも覚える!」 それに、私だって一応、それなりに手入れはしているからな! と彼女は言い切った。 「……そうなんだ……」 それにしては……と言いかけてキラはやめる。その事実を指摘してはさらに泥沼に陥りそうに感じたのだ。 「そうだ。まぁ、そうだな。ここで手に入りそうな代用品を渡すしかないだろうな」 不満はお前が聞けよ! とカガリは宣言をしてくれた。 「わかっているよ」 心配はいらないと思うけど……とキラは心の中で呟く。 「その前に、腹ごしらえか」 さすがに……とカガリが笑う。 「別に、僕は……」 「いいから、いいから! ケバブがおすすめだぞ」 きちんと食事を取って、それからのこりの買い物をしたほうが効率が上がるに決まっているだろう! とカガリはキラの腕を掴む。そして、そのままキラの体を引きずるようにして歩き出した。 何故、会談場所をこんな所にしていしてくるのか。 そう思って彼がため息をついたときだ。 「……嘘、だろう……」 何故ここにあいつがいるんだ、と思わず呟いてしまう。 「誰がいるんだ?」 その瞬間、聞き覚えがある声が耳に届いた。どこかでタイミングを計っていたのではないか。そう思わせるような登場のしかたに、思わず眉を寄せる。 「偶然でしょうが」 だからといって、無視をするわけにはいかない。そう判断をして、彼はキラ達の方を指さした。 「……おやおや。偶然とは恐ろしいものだね」 まさか、あの方までご一緒とは……と意味ありげな笑いを浮かべながらバルトフェルドが隣に腰を下ろしてくる。 「知っているのですか?」 「まぁね。地球上では有名人だよ」 ということは、ちょっと厄介な状況になるかもしれないね、これから……と彼は呟く。 「何か……」 あるのかと問いかけるよりも早く、研ぎ澄まされた精神に触れてくるものがある。 「……まさか……」 「そのまさかだよ。まぁ、ここではある意味日常茶飯事だったね」 事前に情報がつかめただけ、今回はまだましだな……と彼は続けた。その言葉に『どこが』と思わずにいられない。 「あの二人に関しては、想定外だったがね……ここにいるのは、ほとんどが家の連中だよ」 いや、戦う以外に才能がある連中は使い道が多くていいね……と彼は笑う。それはひょっとして、自分の上司に対するイヤミなのだろうか。そんなことすら考えてしまう。 「あの二人に関しては、俺たち二人がいれば十分守れるだろう?」 違うのかね? といわれてしまえば反論のしようがない。 「というわけで、まずはしなければいけない話を終わらせてしまおうか」 あちらが気になるのはわかるが……とバルトフェルドは笑う。 「……この場でセッティングをしたのは、俺の実力を確認するためですか?」 「否定はしないよ」 あの子の実力は直接確かめさせてもらったが、君に関しては他人の噂程度にしか知らない。そう言いながら笑う目の前の男は、間違いなく一流の指揮官なのだろう。 それとも、自分の上司に対する敵愾心から、なのだろうか。 「ったく……だから、うかつに敵を作らないでくれって、頼んでおいたのに……」 もっとも、それなりの地位についてもらわなければいけなかったことも事実。そう考えれば、あの態度もしかたがないのだろうか。 「何。事情がわかればあれはあれで納得できるがね」 もっとも、好悪に関しては、別問題だが……と付け加えられて、また一つため息をついた。 |