このメンバーが顔を合わせるのは本当に久しぶりだと言っていい。
「足つきの連中は……やはり優秀だったんだな」
 道理で俺たちが手こずったはずだ……と口に出したのはディアッカだった。
「……そうだな……ナチュラルと言え、あれだけの能力なら俺たちが落とせなかったのは無理もないか。ストライクの存在があったにしても」
 一番苦汁を舐めさせられたはずのイザークが同意を示す。そんな彼の言葉にあの頃のような憎悪が感じられないのは、あの最後の戦いの時に彼に襲いかかるはずだった事実を知ってしまったからだろうか。
「ストライクのパイロット……本当に死んだのでしょうか」
 ふっと、ニコルがこんなセリフを口にする。
「ニコル?」
 一体何を……とアスランは言外に付け加えながら、年下の同僚の名を呼んだ。
 キラに生きていて欲しいと思っているのは、アスランの本音だ。だが、戦争が終わって一年近く経つというのに、彼の行方はわかっていない。どう考えても、彼が生きているわけないと、ようやく諦め始めたと言うのが彼の現状だ。
「MIA認定されているのは知っています。そして、連合軍の上層部が彼を殺そうとしていたことも……認定された時機を考えれば、彼らがそれを実行したという可能性は否定できません。ですが……」
 ここでニコルは言葉を切る。その後の言葉を口にしていい物可動なのか、悩んでいるようにアスランには感じられた。
「ですが、何なんだ?」
 イザークがいらついたように先の言葉を促す。
「僕の隊にいる足つきの元乗組員ですが、何かを隠しているようなんです。それが何かまでわかりませんが……彼らの口から一度もストライクのパイロットが『死んだ』と言うセリフを聞いたことがありませんので……」
 あるいは……と思っただけだ、とニコルは言葉を口にする。
「そういや……俺のところの奴もそうだな」
 何かを思い出すような表情を作っていたディアッカもニコルの言葉に同意を示すようなセリフを口にした。
「てっきり、連合の上層部の行為を認めたくないだけだとばかり思っていたんだが……」
 そう言う考え方もあるのか、とさらに付け加える。
「アスラン達の所はどうですか?」
「お前の所にはあの『エンデュミオンの鷹』がいたよな?」
 ニコルの問いかけに、ディアッカが興味津々と言ったような表情で視線を向けてきた。
「……確かにいるが……なかなかそこまで突っ込んだ会話は出来ないな。相手の方が一回りも年上だし……まだ警戒をされているらしいからな、俺は」
 声をかければ答えを返してはくれる。一応会話も成り立っていると言えるだろう。だが、まだ彼が自分を信用していないと言うことだろうとアスランは思っていた。
「それも無理はないのだろうが……」
「もう一年なのか、まだ一年なのか、人間によって感じ方が違う……と言うことか」
 珍しいことに、イザークがアスランに同意をするような言葉を口にする。
「お前の場合は、別のところに問題がありそうだがな」
 そんなイザークをディアッカがからかう。
「……何が言いたい、貴様は!」
 即座にイザークが噛みつく。
「どうせ、お前のことだから『ナチュラルごとき』と言う態度を崩していないんだろうなって思っただけだ」
 違うのか、と言い返されて、イザークは返す言葉が見つからないらしい。
「それを何とかしないと、聞き出すにしても聞き出せないだろうが……ストライクのパイロットの話」
 違うのか、と言うディアッカの言葉は間違いではないだろう。
「……キラ、だ。ディアッカ」
 ふっと思いついた……というようにアスランが訂正を入れる。
「アスラン?」
「キラ・ヤマト。ストライクのパイロットの名前」
 一体誰だ、それは……という表情の彼にアスランは説明の言葉を口にした。
「そう言う名前だったんだったな」
 名前すら自分たちは知らなかったのか……と改めて認識したようにイザークが呟く。
「……ともかく、彼らがその《キラ・ヤマト》に関して何かを隠しているというのであれば、聞き出せる環境を作ってあげませんか?」
 そう出来たときが、彼らを完全に味方にしたといえるだろうとニコルは付け加える。
「ようするに、俺たちの力量と度量がためされているって言うわけだ」
 上からも、そして自分たちの下へと配属されてきた元アークエンジェルの乗組員達からも……とディアッカは呟く。
「過大な期待をかけてくれるものだ」
 愁傷なセリフを口にしながらも、イザークの表情はそれを裏切っている。
「まぁ、そのための『紅』ですからね」
 ニコルが苦笑とともに言葉を口にした。もちろん、それは他の者たちも同じだ。
「期待されなくなったときが終わり……というわけだ」
 にやりっと唇の端を持ち上げながらディアッカも言葉を口にする。
 そんな三人の様子を、アスラン一人だけが複雑な思いで見つめていた。