ラクスと話し合った結果、事実をキラに説明するのはアスランの役目になった。他の者たちへはラクスが連絡を取ってくれるという。どう考えても、自分の方が厄介なような気がするとアスランは思いつつも、キラの病室へと向かう。 「アスラン。仕事の方はいいの?」 彼の姿を認めた瞬間、キラはふわっと微笑みながら問いかけてくる。 「……今のところ、俺は本国待機だ……その分、他の連中が動いているが……」 どこか、堅い口調でアスランが答えを返す。その事実に、キラはかすかに柳眉を寄せた。 「アスラン?」 不審そうな声で、キラは彼の名を呼んだ。それに答えることなく、アスランはキラがいるベッドの脇へといすを引き寄せると、腰を下ろした。 「キラ……話があるんだ……」 こう切り出したものの、そこから先の言葉はアスランの口からは出ない。そんな彼の様子に、キラの中で後ろ向きの考えだけが大きくなってるらしい事が揺れる瞳から伝わってくる。だから、早く答えを口にしてやりたいのだが、どう言えばいいのかわからないというのもまた事実だ。 「……僕の……処罰が決まったの?」 焦れたのか、ぽつりとキラがこう呟いた。 「何を言っているんだ? 誰がキラに罰を与えるって? そんなこと、あるわけないだろう」 キラは十分に負債をはらったのだから……とアスランは即座にキラの言葉を否定する。 「じゃ……何があったの?」 教えて……とキラはアスランの瞳を覗き込む。 「……いろいろとキラの体を検査していただろう?」 それでもまだなにかを悩んでいるような素振りをアスランは見せる。 「うん」 それがどうしたのか、とキラは瞳で問いかけてきた。そんなところは昔と変わっていないな……とアスランは今言うべき言葉とは関係のないことを思ってしまう。それが一種の逃避行動だと言うことをアスランはわかっている。 「それでね……あることがわかったんだけど……キラ、落ち着いて話を聞いてくれるね?」 「……今日のアスラン、何かおかしいよ?」 一体何があったの? とキラは不思議そうにアスランを見つめていた。 「そうかもしれないな……ちょっとショックだったから……」 言葉とともにアスランはキラから視線をそらす。 「……アスラン?」 それがキラの不安を増長するだけだとはわかっている。だが、キラの瞳を見つめていればいつまで経っても答えを口にすることが出来ない。 「キラの遺伝子を調べたらね……染色体がXXだったんだって……」 そして、そのまま一息に言葉を口にした。 「……僕が、何だって?」 予想通りというか、何というか……キラはアスランの言葉が理解できないと言うように聞き返してくる。 「端的に言ってしまえば……キラが女の子だったって……」 はっきりと言ってしまった方がいいのか……とアスランが言葉を口にした。 「僕が? アスラン……冗談は……」 やめて、とキラは無理に微笑んでみせる。 「残念だけど……冗談じゃないらしい。俺だって、冗談であればよかったと思うんだが……」 実際にそう言う事例があるのだ、とアスランは付け加えた。 「……キラの場合、チェックしきれなかった……と言うのが本当なんだろうな……」 俺も気がつかなかったし……というアスランの言葉は間違いなく真実だ。わかっていたら、もっとあれこれ出来ていただろうに、と同時に思う。 「……でも、今更……」 「その気持ちもわかる……でも、これからキラが生きていく上でいろいろと不都合が出てくると言うのも事実なんだって……」 考える時間はあるだろうけど、と口にしながら、アスランはキラへと手を伸ばす。そして、そっとキラの頬を手で包んだ。 「でも、俺はキラがキラでいてくれればいいんだよね」 側にいてくれるだけで……といいながらアスランは微笑む。 「もう離れないでくれ……俺がお前を守るから」 側にいてくれないことがあれほど辛いものだとは思わなかった……と付け加えるアスランに、キラは小さく頷いた。 |