アスラン達は大丈夫だろうか。
 カガリとケンカをしていないだろうか。
 もちろん、何かあってもアスランが傷つけられることはないだろう。そして、彼のことだからラクスもきっちりと守りきるのはわかりきっている。
 でも、カガリは……と考えれば不安になってしまう。
 そう思っても、今のキラには確認する方法がない。こうなるんだったら、ハロを老いてくるか、ウエブカメラでもしかけておくべきだっただろうか、と首をかしげた。
「大丈夫ですよ」
 そんな彼の気持ちを察したのか。ニコルが優しい声音で言葉を口にする。
「そうそ。イザークも行っただろう? なら、正論は口にしても手は出さないって」
 少なくとも、こちらから……と付け加えられたのは、彼もカガリの性格を知っているからだろう。
「イザークはあれでもフェミニストだからさ」
 エザリアの、教育が行き届いているからな……と言う言葉には同意していいものなのだろうか。
「マザコンですしね、イザークは」
 もっともエザリア相手なら納得するしかないが、とニコルは相変わらず厳しいが愛情がこもっているセリフを口にしてくれた。
「まぁ、あいつの場合、女性にだけではなく子供や弱者にも優しいからいいのか」
 口調はあんなだけどな、と出来悪化は頷きながら口にする。
 その言葉に、キラは『あれ?』と思う。
 イザークは自分にも優しい。
 しかし、自分は女性でない。と言うことは、弱者と認識されているのだろうか。
 確かにそうかもしれないが、どこか面白くない。
「お前は、お気に入り、だからだって」
 イザークの中では女性だとか何かっていうのはまったく関係ないカテゴリになっている。ディアッカは口調と共にこう言ってきた。
「友達には親切にしてやりたい。そう思うのは当たり前のことだろう?」
 それに、と彼はさらに言葉を重ねる。
「俺たちの方が年長なんだぞ?」
 一人っ子のイザークにしてみれば、キラは可愛い弟のようなものだ。だから、と言われれば、そうなのかもしれないとは思う。
「あのエザリア様だって、お前は息子扱いだしな」
 それに関しては、自分たちの両親も似たようなものだから、何も言えないが……と彼は続ける。
「そうですよね」
 家の母も、キラの世話を焼くのが楽しいらしい……とニコルも頷いて見せた。
「だから、あまりあれこれ考えなくていいです」
 キラが笑っていてくれるのが一番だ。彼はそうも付け加える。
「あの人も、それに気付いてくれればいいのですが」
 言葉とともにニコルは視線をアスラン達がいる部屋の窓へと向けた。
「国を一番に考えることが悪いとは言いません。でも、それと同じくらい、その個人のことも考えて貰わなければいけませんよね」
 どちらを優先すべき、と言う問題ではない。
 どちらも同じくらい重要なのだ。
「少なくとも、僕はそう考えていますが……」
 ニコルはこう言ってため息をつく。
「心配するな。俺だって同じだ。それに、どんな人間だろうと、そいつを大切にしている奴は必ずいるはずなんだ」
 自分の我を遠そうとガンバルのはいいが、そのせいでいらぬ恨みを買ってしまうとわからないのか……とディアッカもため息をつく。
「少なくとも、キラに何かしてくれたら、俺らの恨みを買うぞ」
 幼なじみだろうと何だろうと関係ない。彼はさらにこうも付け加える。
 その言葉に、キラは視線を落とす。
 自分のせいで、と思ってしまったのだ。
「君のせいではない。だから、そんなに気に病む必要はないよ」
 今まで黙って聞いているだけだった彼が静かに口を開く。
「あの子が、何も学ばなかった。ただそれだけのことだ」
 だからこそ、それを正さなければいけない。そうするのが、自分たちの役目だろう。彼はさらに言葉を重ねる。
「その前に、あの子が彼等の言葉から何かを感じ取ってくれればいいのだが……」
 あの様子では難しいのではないか。
「それでも、あの子がアスハの後継なのだよ」
 他の誰でもなく、という言葉の中にどれだけの愛情がこめられているか。彼女は知っているのだろうか。
 できれば、それに気付いて欲しい。そう思いながら、キラもまた、自分たちの部屋へと視線を向けた。


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