結論から言えば、アスラン達の元に再襲撃はなかった。だが、予想外の場所に突撃はあったらしい。
「……本当、バカですわ」
 自分たちの元に足を運んできたなんて、とラクスは微笑みながら口にする。
「そうそう。僕たちにあれこれ言ってきても何も出来ませんよね」
 くすくすと笑いながらニコルも頷いて見せた。
「……どうやら、十分に憂さ晴らしをしてきたようだな」
 あきれたようにイザークが呟く。
「そういってやるなって。俺たちだって、あいつらの立場なら同じようなことをしただろう?」
 ディアッカがそんな彼を戒めている。
「否定はせんが……」
 それにしても、ずいぶんと派手にやってくれたな……と彼は話題を変えるように視線を中にはへと向けた。
「桜が無事だっただけでもよしとしておこう」
 アスランは苦笑と共にこう告げる。
「なぁ、キラ?」
 そのまま、隣に座っている彼に声をかければ、彼は小さく頷いて見せた。
「しかし、どうして……」
「……キラが泣くとかわいそうだから、とあれの周囲にも防御壁を設置していたんだよ」
 誰がと言わなくてもわかるだろう? とため息混じりにアスランは告げる。
「過剰とも言えるそれのおかげで、こちらは無事だったんだからいいことにしておこうじゃん」
 後は、親に任せるしかない。ディアッカは口調と共にこういった。
「悔しいが、今の俺たちではしかたがあるまい」
 自分たちは、あくまでも親の七光りのおかげで好きかってできる存在でしかないのだ。イザークはこう告げる。
 それに、アスランだけではなくディアッカも頷いてみせる。同時に、少しだけ重苦しい空気が周囲を支配した。
「今は、ですわ」
 しかし、それをラクスの言葉が吹き飛ばす。
「今回の経験がいずれ生きてきます。それがわかっているから、皆様、協力をしてくださったのでしょう」
 それに、と彼女は少しだけ笑みの意味を変える。
「わたくしたちが今の立場だからこそ、あちらは侮ってくれたのではありませんか?」
「あぁ、それは否定できません。おかげで早々に馬脚を現してくれました」
 おかげで、つっこみやすかった……とニコルも頷いて見せた。
「あの程度の脅しで、わたくしたちをどうこうできると思っておいでだったのでしょうか」
 少なくとも、自分たちのことを知っている人間なら、そんな世迷い言を言わないはずなのに。ラクスはそうも付け加える。
「……普通の人間は知らないと思うぞ」
 ラクスもニコルも、見た目通りの人間だと思っているものが多い。実際、人前ではしっかりと猫をかぶっているだろう……とイザークが呟く。
「何かおっしゃいまして?」
 ラクスが即座に問いかけてくる。その瞬間、イザークが凍り付く。
「……バカ……」
 あきれたようにディアッカが呟いた。しかし、それで聞かなかったことにしてくれるラクスではない。さらに何かを口にしようとする。
「どうした、キラ」
 だが、アスランにはそれよりもキラの動きの方が重要だった。だから、視線を彼へと向ける。
 そうすれば、キラはそっとカップをアスランの方へと移動させた。
「お茶のお代わりか?」
 この言葉に、彼は小さく頷いてみせる。
「わかった。ちょっと待ってろ」
 イザーク、と視線を移動させながらアスランは彼に呼びかけた。
「……他に、おかわりが欲しいものはいるか?」
 ほっとした表情を隠さずに彼はこう口にする。
「しかたがありませんわね、キラの希望では」
 苦笑と共に、ラクスもまたカップを移動させてきた。
「そうですね」
 ニコルも同様の仕草を見せる。
「いっそ、全員分淹れてこいよ」
 どのみち、そのうちお代わりしたくなるんだから。ディアッカのその言葉にイザークは頷いて見せた。


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