「どうやら、ここが目的地のようだな」
 どこか不満げな口調でディアッカが告げる。
「そのようだ」
 もっとも、これからまた移動を開始する可能性は否定できない。イザークは頷きながら言葉を重ねた。
「それよりも、ここは誰の持ち物だ?」
 これだけ大きな倉庫なら、プラント内でもそれなりに力を持った人間――あるいは企業か――の所有物なのではないか。
「……オーブの出先機関、のようだな」
 おそらく、評定されている地図にそれらしい記述があったのか。ディアッカはこう言い返してくる。
「オーブ?」
 と言うことは、とイザークが言いかけたときだ。またしても端末がメールの着信を告げてくる。
「ちぃっ!」
 こんな時に、と思いながらも端末に表示されている名前を確認した。
「……キラ?」
 まさか、とは思う。だが、何度見直してもそこには間違いなく、自分たちにとって無視できない存在の名前が表示されていた。
「何があった?」
 このような状況で彼が連絡を入れてくるのはよっぽどのことだ。
「イザーク!」
「今確認する! その間に、お前は警察に連絡をしろ」
 自分たちでは中の操作をすることは出来ない。だから、警察の力を借りるしかないのだ。もちろん、事前にエザリアに手を回して貰っている。だから、無条件で協力をしてくれるはずだ。
「はいはい」
 確かに、そちらの方が優先だよな……と呟きながら、彼は自分の端末に手を伸ばしている。
 それを確認して、イザークはキラからのメールを開いた。
 次の瞬間、彼は自分の顔が引きつっていくのを自覚する。
「……バカが……」
 いったい何を考えているのか。だが、確かに戦略としては間違っていない。しかし、それを実行に移すための情報収集はお粗末だったようだが。
「何かあったんだな?」
 警察に連絡を入れおわっらのだろう。ディアッカが問いかけてくる。
「……襲われているそうだ」
 ぼそり、と呟くように言葉を返せば、彼の表情が驚愕に彩られた。
「それって、まずくねぇ?」
 自分たちも戻った方がいいのではないか。彼はこう問いかけてくる。
「ラスティが一緒にいるそうだ」
 それにセキュリティシステムを作動させていると言う話だ、とイザークは視線も向けずに告げる。
「何よりも、俺たちが行ってどうなる?」
 今戻っても入れないだろう。
 何よりも、自分たちが行くことで足手まといになる可能性は否定できない。
「悔しいが……俺たちに出来るのはここで連中を見張っていることだ」
 それでも、何も知らされないと言うことが自分たちにとってマイナスになると考えているのではないか。だから、キラはメールで連絡を寄越したのではないか。
「逆に言えば、俺たちならば伝えても構わない。そう思っているんだろうな」
 ラクスとニコルには内緒でね、と書いてあった……と言うことは、彼等には連絡してないのだろう。
「……あいつらだと、全ての段取りを吹き飛ばしてでも戻るだろうからな」
 その判断は正しい、とイザークは考える。
「俺たちなら、情報を与えられても適切な判断が出来ると思ってくれているってことか」
 そうなると、自分たちはやはりここに留まらざるを得ないな……とディアッカはため息をつく。
「せめて、警察がたどり着くまでは……」
 そう続けた。
「そうだな」
 しかし、何故、この場所だったのか。少しでも意識の中からそれを追い出そうとイザークは呟いた。
「絶対に、理由があるはずだ」
「そうだな」
 それに、ディアッカも頷いてみせる。
「警察が来るまでの間に、あそこの地図でも探すか」
 そして、彼はこう続けた。


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