アスランから連絡が来た。
 それに関してはおかしくはない。
 だが、それを受けているニコルの表情が強ばっていることが気にかかるのはどうしてなのだろうか。
 そんなことを考えながらも、ラクスはピンクをそっと撫でていた。
「わかりました。こちらも気をつけます」
 やがて、このセリフと共にニコルは通話を終わらせる。
「あちらで、何かがあったのですか?」
 それを確認してから、ラクスは問いかけた。
「キラさんの叔父と名乗る不審者がでたそうです」
 彼の話から推測してオーブの軍人ではないか。アスラン達はそう言う結論に達したらしい、とニコルはさらに言葉を重ねた。
「そうですか」
 何を考えているのか、とラクスは目をすがめる。
「顔を見せてどうするつもりだったんでしょうね」
 アスラン達ではどうすることも出来ないと思っていたのか。そう彼女は続けた。
「それこそ大間違いですのに」
 確かに、オーブの基準で考えれば、自分たちはまだまだ子供かもしれない。
 だが、プラントではそれなりの権限を手にしている。
 しかも、今回のことは最高評議会議員である自分たちの親の後押しもあるのだ。
「間違いなく、後悔をすることになるますわね、その方は」
 もっとも、と彼女は顔をしかめる。
「そのことがわかっていてそのような行動を取られたのでしたら、本当に厄介なことになります」
 おそらくこちらの準備が整う前に行動を起こすことが出来る。その自信があるのだろう。だとするなら、こちらが後手に回ることになる。
「アスランもそれを心配していました」
 だから、ラスティと一緒に対策を練ると言っていた。ニコルは即座に言葉を返してくる。
「そうですか。ラスティも一緒にいるのですか」
 彼の言葉に少しだけ安心をした。彼であれば、自分たちとは違って直ぐにザフトの人間を動かせる立場にいる。だから、何があっても直ぐに対処できるだろう。
「そのことをイザーク達には?」
 連絡したのだろうか。ラクスは首をかしげた。
「キラさんがメールを送ったそうです」
 彼等の方もどのような状況にあるのかわからないから、直接連絡を入れない方がいいのではないか。そう判断をしたのだと言っていた……とニコルは言ってくる。
「そうですわね」
 しかし、直接動くことが出来ない。その事実が悔しい。ラクスはため息とともにこう告げた。

 同じ頃、イザークの端末がメールの着信を告げていた。
「誰だ!」
 この忙しいときに。そう思いながらも彼は差出人を確認する。次の瞬間、今までとは違った意味で表情を強ばらせた。
「どうかしたのか?」
 ディアッカがこう問いかけてくる。
「キラからのメールだ」
 言葉を返しながら直ぐに内容を確認した。
「あちらに、オーブ関係者からの接触があったそうだ。しかも、キラの叔父と名乗っていたらしい」
「はぁ?」
 あいつに叔父なんていないだろう……とディアッカが即座に言い返してくる。
「キラはそういっている。ザラ閣下を通せと言って追い返したそうだ。
 こちらと合流する可能性があるから、と言うことで連絡をしてきたらしい。そう続ける。
「ご丁寧に、相手の顔写真付きだ」
 これなら、間違えるはずがないな。そういってイザークは笑う。
「って、俺は確認できないんだけど」
 流石に、とディアッカはため息をつく。
「心配しするな。俺が顔を覚えた」
 それに、とイザークは続ける。
「必要なら、停止したときに覚えろ」
 ともかく、あちらを見逃すな……と付け加えた。
「わかってるって」
 しかし、どうせならプラント内部の監視システムを貸してくれればいいのに。そうすれば、こんな風にちまちまと尾行しなくてすむのではないか。ディアッカはそう主張をする。
「流石に、それでは目立ちすぎる、と言うことではないのか?」
 あるいは自分たちの存在そのものが陽動なのか。
 どちらにしても、とイザークは言葉を重ねる。
「俺たちは自分の役目を果たすだけだ」
「だよな」
 それに、ディアッカも即座に頷いて見せた。


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