そのころ、イザークとディアッカは図書館へと足を運んでいた。
「……結構、あるな」
 検索結果を確認して、イザークが微かに眉を乗せる。
「もっとも、どれだけ真実が伝えられているか、わかったものではないが」
「……検閲が入っていると?」
 ディアッカが即座に囁いてきた。
「可能性は否定できないだろうが」
 オーブ国内はともかく、他国に伝わるであろう情報に、迂闊なことをかけるはずがない。だから、検閲が入って当然ではないか。
 だが、とイザークは言葉を続ける。
「各種行事や、それに参加しているメンバー。そして、今まで決定をした法案などまではごまかせないはずだ」
 それから、現在のオーブの勢力分布を推測することは出来るだろう。
「……なるほど」
 と言うことは、これからそれを抜き出さなければいけないわけだな……とディアッカはため息をつく。
「文句はいいから、さっさとやれ!」
 そんな彼に向かって、イザークはこう命じる。
「今日中に終わらせろよ?」
 せめて、記事の選別だけでも、とそう付け加えた。その瞬間、彼の表情が強ばる。
「……やれって、俺だけ?」
 お前は何をするんだ? とディアッカは問いかけてきた。
「俺はオーブの法律と判例を調べる」
 キラと同じような状況に置かれたものはいないか。その時にオーブの裁判所がどのような判断を下したのか。それを確認できれば、対処方法を見つけられるかもしれない。
「それとも、お前がそちらをやるか?」
 自分はそれでも構わないぞ、と付け加える。
「……遠慮します……」
 流石に、そちらの方が厄介そうだ。そう口にしながら、彼は両手をあげる。
「なら、さっさと作業を開始しろ」
 キラ達と夕食を取る約束をしているのだから、とイザークは彼をにらみつけた。
「わかってるって」
 頑張ります、と彼はため息混じりに口にする。
「今回のレポートも、これをネタにするしかないのか」
 それに関しては文句がないからいいけど、とディアッカは笑う。
「オーブの政治について、というのはなかなか楽しい課題だ」
「ふん。そう思うならそれなりの作業をしろ」
 最初からそのつもりだったとは言わない。代わりにこう言うとイザークは今まで自分が使っていた端末をディアッカへと明け渡す。
「イザーク?」
「そのまま使った方が時間の無駄を省ける」
 自分が新しい端末で検索を開始すればいいだけのことだ。そういって隣の端末をそう差し始める。
「お心遣い、ありがとう……と言うべきなのか?」
 まぁ、あくまでもキラのためなんだろうが。そうディアッカはため息をつく。
「わかっているなら、ぐだぐだ言うな」
 イザークは端末を操作しながらディアッカをしかりつける。
「そんな暇があるなら、一つでも条件を絞り込め」
 その方が有意義だろうが! と口にした。
「……まったく……」
 少しぐらい、軽口を叩いてもいいだろうが。ディアッカはそう口にしながらキーボードを叩き始める。
「はじめからそうすればいいんだ」
 軽口なら、後でいくらでも叩けるだろう。むしろ、キラの前で叩け……と付け加える。そうすれば、キラが喜ぶだろう。そう呟きながら、イザークもまた、必要なデーターを検索していく。
「それは、お前には絶対出来ないことだもんな」
 ディアッカがそれにこう言い返してくる。
 しかし、それに関しては反論をするつもりはない。事実だ、とイザーク自身が自覚しているのだ。
「さっさと終わらせて、キラとラクス嬢が好きなケーキでも買っていくか」
 そうすれば、二人とも喜ぶだろう。それが作業を進める原動力にもなるのではないか。イザークはそう考えていた。



INDEXNEXT



最遊釈厄伝