シーツとアスランの腕に包まれていながらも、キラの意識は封筒へと向けられてしまう。
「気になるの?」
 静かな声で、アスランが問いかけてくる。それに、キラは素直に頷いて見せた。
「なら、中身を確認する?」
 気になるなら、そうしてしまった方がいい。
 もし気に入らない内容なら、その時は改めでどうすればいいのか考えればいいのではないか。
「俺一人じゃ心配だって言うなら……ラクス達も呼ぶから」
 そうすれば、誰か一人が必ずいい考えを出してくれるに決まっている。
 それはそうかもしれない。でも、とキラは首をかしげる。
 だが、それではみんなに迷惑をかけてしまうことにならないだろうか。
 アスランにこうして貰っていることすら、彼の負担にならないかと不安になっているのに……とキラは心の中で呟く。
「キラ」
 くすりと笑いながら、アスランはキラの体を自分の方に抱き寄せる。
「俺はこうしていられるのが一番の幸せなんだよ?」
 自分の腕の中でキラが笑っていてくれることが……とためらいもなく恥ずかしいセリフを口にしてくれた。そういうところは、流石アスラン、と言うべきなのか。
「ラクス達だって、キラが笑ってくれるならどんなことでも手を貸してくれるよ」
 だから、キラのため集まることなんて、どうと言うことはない。
 むしろ、ここで声をかけられない方が怒られる。
 さらに、彼はこう付け加えてくれた。
 だが、それが本当なのかどうかがわからない。アスランのことだから、自分を安心させるために嘘を付くぐらい、平気でやりそうなのだ。
「第一、それはキラにとって重大な転機になりかねない」
 そうだろう? とアスランは真面目な声で問いかけてくる。
 確かに、それはそうだろう。キラはそう判断をして小さく首を縦に振った。
「そういうときに側にいられないと知ったら、あいつらは爆発するぞ」
 それこそ、とアスランは付け加える。
「俺たちは……既に一度後悔しているからな」
 それがいつのことなのか、キラにも想像が付いた。
 彼等は、自分たちがプラントに帰った後に起きたあの事件のことを悔やんでいるのだろう。あるいは、そのせいでキラの声が失われてしまったことか。
 しかし、それは彼等の責任ではないのに。
 悪いのはテロリストだろう。キラはそう心の中で呟く。
 あるいは、いつまでもこの状況に甘んじている自分だろうか。
「キラ。もう一回したい?」
 アスランがこんな問いかけをしてくる。
 その意味がわからないわけではない。でも、何故、このような場面でそんなセリフを口にするのか、キラにはわからなかった。
「そうすれば、余計なことを考えないですむだろう?」
 そんなキラの考えがわかったのか。アスランは微笑みと共にこう言ってくる。
 信じられない。
 まさか、そういう意味だったなんて。
 その気持ちを隠すことなく、キラは表情に出す。
「キラが考えていることぐらい、わかるさ」
 ずっと一緒にいるんだから……とアスランは平然と告げる。
「お前のことで俺たちが迷惑を被ることなんてないんだよ、キラ」
 そういうときは、ちゃんと言うから。彼はそうも付け加える。
「俺たちは好きだからやっているんだ。だから、キラはあれこれ考えなくていい」
 ここまで言われては信用しないわけにはいかないのではないか。
「で、今読む?」
 それとも、みんなが集まったときに読むか? とアスランは問いかけてくる。
 確かに、読んでしまった方がいいのだろう。しかし、そこに何が書いてあるのか考えると、とても怖い。
 せめて、夢には見たくない。
「わかった」
 明日、他のみんなに声をかけてからにしよう。そういいながら、アスランはキラの額に唇を落とした。
「だから、今はゆっくりと寝よう?」
 こうしていてあげるから。そう囁きながら、アスランはしっかりとキラの体を抱きしめる。その温もりに包まれたまま、キラはそっと目を閉じた。


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